俺はこのところ頻繁に浮かぶ疑問を解決するために、まさに今愛し合っているという中幸せと快感でふわふわしている脳みそを動かした。俺は謙也さんが好きだ。好きだから現在進行形でこんな風に体を重ねたり、そこから幸せを噛み締める事だって出来る。だけど謙也さんは一体何がどうなって謙也さんなんだろう。俺が好きな謙也さんは、一体何の定義があって謙也さんなんだろう。こんな事が頭に浮かぶのだ。本人に聞いたってどうせあほか、と言い放たれるだけだろうけどこれは真剣な話で。元々同性同士に理解がある方だったお陰か、自覚した時も多分普通よりはすんなりと受け入れられた。男だとか女だとかあまり関係ないと思っているし、それに体を交り快感に意識を任せれば彼が男だなんてすぐ忘れられた。繋がっている事に満たされる。けどね、やっぱりこれは忘れちゃならないと思うんだよ。謙也さんが男であるという事を俺は忘れるわけにはいかないんだよ。もし彼が今と打って変わって綺麗な黒髪だっとして、きっとそれでも好きになれたと思う。何の痛みもないさらさらの髪が可愛い、なんて何かしら理由を付けてまた愛してしまうさ。けど今俺が生きているこの世界で謙也さんは金髪で、その謙也さんを好きになった。ふわふわの髪が気持ち良くて好き。そう言って頭を撫でていると14歳の子供ながらに幸せだなぁ、なんて堪らなくなるんだ。そりゃあ見た事の無い謙也さんへの興味はあるけど、金髪で足が速くて笑顔が似合う男の人、それら一つ一つが謙也さんという人間を成形する要素でどれが欠けたって謙也さんで無くなってしまうんだ。女の子でも好きになっていた、なんてロマンチックな言葉も思い付くけど、もし目の前に二人現れたとしたらきっと見慣れた方を選ぶだろう。テニスをしたり買い物に行ったり、今みたいに男同士で愛し合う幸せがなってしまうなら新しい幸せなんていらない。この場所で俺が愛する謙也さんは一人でいい。もう一人の彼には違う世界へにでも行ってもらおう。どうせ生まれ変わっても好きになってしまうだろうから、そこで生きる俺が愛してあげるよ。別の俺が別の謙也さんを愛する、そんなパラレルワールドがいくつもあればそれはそれで幸せじゃないか。肝心の謙也さんである定義はよく分からないけど、俺が知っている謙也さんが謙也さんの全てであってほしいと思うくらい俺はどうしようもなく独占欲の強い男だった。目の前の恋人に目をやれば、良かった、ちゃんと謙也さんがいた。

20110728
情事中なだけでエロくないですね。