※嘘が御上手ですねの続き。

あの笑顔が見たいと思って頑張ったっちゅうのに、結局それを作り出すんは俺やのうて財前か。自分でしでかしといて落ち込んでるで、誰か笑ってくれや。人気の無い屋上で風に吹かれれば、恐さも何も無かった。今日も平和や。俺がここにおるとも知らんと、何処からか響くサッカーの掛け声やはしゃぐ笑い声はスーッと耳をすり抜けた。その様子を見た誰かに何黄昏てんねん、って前に言われた事あったけど、夕方ちゃうねんから黄昏とは言わん。ただなんとなくぼーっとしとるだけや。謙也の為。それってこうゆう事なんやろか。そんなんとっくの前から気付いとんのに。愛する人の幸せが自分の幸せ、とかどこのかっこつけが言ったんや。天気が怪しいけどもう少しこのままでいさせてくれ。もうすぐ聞こえてくるから、ほら、あの嬉しそうな足音が。息切れするまで走り回って、俺に伝えたくて?そんな急がんでも、俺はお前から逃げへんど。

「ユウジ!!昨日の、何やったん!」
「何がや」
「メール。財前になんか聞かれたらユウジの冗談やって言うてええって・・・」
「ちょっとふざけただけや」
「何で言うたん、もしバレたら」
「バレへん自信無かったらしとらん」
「そっか・・・。けど財前がな、冗談でも嫌やって焼きもち妬いてくれた」
「・・・」
「財前からキスしてくれたし、久しぶりに・・・エッチも出来た」
「ほんで」
「いや、俺やっぱなんだかんだ愛されてるんやなぁって」
「それ言いに走ってったんか」
「おん、ビックリしたけどなんかありがとうな!ほんじゃ、俺戻るわ。ユウジも授業出ろよ!」

謙也って、キスされただけであんな嬉しそうな顔すんのか。俺とセックスしてて照れた事なんかあったかな。

「俺は何がしたいんや」

ありがとうやって、感謝されてしもた。あー、俺って優し。

20110721
黄昏:盛りの過ぎた人生の末期。