「謙也、さん・・・っ」
「あっ、ひかる、ひかるっ!」

俺の下に居るこの金髪頭は酷く興奮している。部室って事を忘れてんのやろか、あまりに声がでかいから口に指を突っ込んで無理矢理塞いでやった。その指にさえ舌を絡めてくるんやから多分この状況で何をしたってこいつを落ち着かす事は出来ひんのやと思う。甘い声で擦り寄って誘ってくんのは何か精神的に辛い事があった時。こんな事頼めんのは俺しか居やへんのやと。なんや、ただの慰め役かいな。呆れつつ自分より背の高い男に覆い被って腰を振る俺も俺やけど。

「謙也さん・・・、も、イく・・・」
「俺、もっ、イクからぁ・・・っ!」

せやから文句言われへんし、オマケに部活の後輩の名前借りてるんやから胸糞悪いわ。そうしてくれって頼まれてるから仕方無いけどそれでも次の日財前の顔を見たら思い出すし、お前昨日謙也とヤったんやで、とか気味の悪い事を考えてしまう。なんで後輩彼氏とセックスレスで部活仲間の俺とは週一でヤってんねん。おかげで恋人がおらんにも関わらず俺のあそこは欲求不満の“よ”の字も知らん状態や。そして行為が終わった後何があったんか聞いてやるのは毎度の事で、もしこっちが聞かんくても謙也の方から話してくるから最早これは恒例の行事のようになっている。

「ほんで、何があったんや」
「財前が・・・構ってくれへん」
「いっつもやろ」
「やから困ってんねん!!」
「どんだけしてないん」
「もうすぐ三週間・・・」

しゅんと背中を丸めて膝に顔を埋める謙也は情けないくらい眉を垂らして唸る。今時の中学生がどのくらいの頻度で性交渉をするのかとかその辺の情報は現役中学生の俺の勝手な勘やけど、愛する恋人と最後にしたのが三週間前ってゆうのは確かに寂しいような気もする。毎日会ってんのに触れれへんとか生殺しや。まぁ、毎日顔会わしてるからこそそのくらいでええって言われたら俺は折れるけどな。それにあの淡白な後輩ががっつくとは思えへんしむしろ予想通りとも言える。ただ、それが謙也にとっては愛されてないとか嫌われたとかに思えてならへんらしい。

「やって、愛情表現の最終形態やん」
「さよか。まぁ、週一か週二やな」
「えっ、俺もっとしたい、毎日!」
「え、」

いや、もしかしたらこいつはただ単にセックスが好きなだけかもしれん。取り敢えず、俺に相談するくらいやったら財前に直接伝えろって言ってやりたいところやけど、必死に誘ってこの結果らしいから散々やな。魅力ないんやろかと落ち込む謙也の頭を撫でたら俺まで複雑な気持ちになった。

「俺、頭撫でられんの好き」

憎たらしい笑顔しやがって。色気は無いかもしれんけど、魅力ならいっぱい知ってんで。例えばこのふわふわのひよこ頭、よお似合っとる。大口開けて笑うのもかわええし、こいつは誰にでも優しい。あと、何べん財前に泣かされても好きでおるくらい一途なんも魅力。ほんで、俺にだけ頼ってくるところも。それがモノマネが得意で自分より背が低いっちゅー理由からやったとしてもや。虚しい虚しい慰め役に他の部員やのうて俺が選ばれた。セックスしてる時甘い声で後輩の名前を呼ぶけどそこにおんのは財前やない。繋がってんのは、謙也を夢中にさせてんのは俺や。それを分かって謙也は来てんのやったら、有りもせぇへん可能性に懸けてしもてもしゃあないやろ。いつかは、ってアホみたいに期待してしもてもしゃあないやろ。なぁ、なんで彼氏じゃない男に擦り寄ってくるん。なんで好きでもない俺に突かれて喘げるん、気持ち良さそうにするん。

「ユウジ・・・」
「あ?」
「もっ回、したなってきた」
「明日も部活やど」
「でも起ってきてしもた・・・」
「知らんからな」

一つ溜め息を吐いてから抱き寄せて、キスして、頭を撫でる。いつもの流れ。切なそうに笑う謙也に早く入れたいって言ったら、ええよ財前、って返事が来た。目隠しなんかしたらん。自分で目瞑っとけ。なんだかんだ俺も相当な欲求不満やな。

20110713
望みを捨てきれない一氏。