これはなかなか拝めないぞというくらいの晴天で、珍しく屋上で昼休みを過ごすことになった。弁当と購買で買ったパンとジュースを持って歩いていたのに、いつの間にか俺が先やと言い合って競争しながら階段を駆け上がる。扉を開いて屋上に出た瞬間射すような眩しさに二人とも足が止まった。

「晴れてんなー」
「白石息切れしてるしな」
「スピードスターに付いてったんやから上等やろ」

適当にいい感じの場所を見付けて腰を降ろす。どっちが先に着いたとかはどうでもいい。友達と競争しながら階段を駆け上がるその行為が子供らしくてなんか好き。中学生って感じ。俺がそんな考えに浸っている隣りで白石はフェンスにもたれ掛かってメロンパンを食べていた。屋上で光を浴びながらパンを頬張るテニス部部長。白石だからかなかなか画になる。

「似合うな、この感じ。なんかええわ」
「被写体がええんやな」
「特に空が」
「俺が居るから尚更な」
「そのポッキーくれ」

この顔で言われると本気か冗談か分からんから適当に流したけど白石のことやからネタなんやろう。相変わらずのギャグセン、俺を含む全国の男を敵に回しそうやわ。そんな白石を横目になんとなくフェンスの向こうに顔をやるとただどこまでも続く青と白。こんな綺麗な空に今まで気付かなかったのか。人間美しいものに惹かれる癖に、鈍感だ。

「空ってさぁ、雲一つ無いより青と白のバランスがいい方が綺麗ちゃうか」
「なんや語りか?」
「やってそう思わん?」
「謙也の頭も綺麗やで。反射して」
「これは反射やなくてスター故の輝きやな」
「イラッとくるわ」

食べ終わった白石はごろんと地面に寝転びながら話す。繰り返す中身の無い低レベルな会話が中学生らしいと言うのか子供っぽいと言うのか。どっちも一緒か。だけどこれが楽しいと素直に思える。きっとこんな風にふざけたりするのも学生の特権。動くたびに音を立てるフェンスとか人気の無い屋上とか光を浴びながら食べる購買のパンとか、それらが今だけのものだということは分かる。だからこそ教室にこもってるなんて勿体無い。みんなもっと外へ出るべきだ。たったこれだけで学生を満喫しているように思えて、今自分達が制服を着ていることが嬉しくなった。

「なんか青春っぽいな」
「俺も思ったー」

一瞬寝かけてちらっと隣を見ると白石も寝そうになっていた。やっぱり、屋上は俺と白石だけでいいや。なんだかこのまま空に吸い込まれそうな気がした。

20110817
ベタな青春が書きたかった。