場所が場所なだけに俺は嫌って言うつもりやったんやけど、ローション代わりに精液でいいかと聞いてきた白石は俺の返事を聞く前に自分のそれを扱き始めた。爽やかな顔が色ぽっく歪む。それを見てとっさに顔を背けた。いくら何度も裸を見たことがあると言っても恋人兼親友の自慰姿をまじまじ見るのは恥ずかしいと言うか。なんだか見てはいけないような気がした。当の本人は隠す素振りすら見せないけど。人前で下ネタとか言いませんみたいな顔してギャップありすぎやねん。

「まだか…」

照れる俺なんてお構い無しの白石はちょっと待っててや、と適当に返事をした。言われた通り、勿論顔は見ないでしばらく待っていたら何かに耐えるような声が小さく聞こえて、白石がイったんだと気付く。よく人前でオナニーなんか出来るな。それにドキドキしてる俺もどうかと思うけど。

「あ、俺がするわ…」
「すまん」

片手で俺のベルトを上手く外せない白石を慌てて手伝う。多分もう片方の手には今出した精液が付いてるんやろう。手の形がそんな感じ。ついでにズボンに手を掛けながらこれも?と目で聞くと黙ったまま頷かれたのでその通りにする。とは言ってもまだ恥ずかしさが抜けない俺の動作はゆっくりで、それに痺れを切らした白石に勢いよくズボンと下着を下げられた。そのまま体の向きを変えられ、白石に背を向けるよう体制を取る。

「う…っ、ぁ、」
「軽く指入れただけやって」
「けど、苦しい…」
「起ってる」
「ちが、」
「本間感度ええねんから」
「だから、ちがう、」

否定は意味を成さないようで、そんなところも可愛いって言ってんの、と髪の上からのキス。こんなキザなことをしても似合うんやから凄いよな。イケメンって得や。顔だけやけど。

「あー、そんなとこ抱き付くなって」

抜き差しを繰り返しながら確実に奥へ入ってくる指に耐えるため、俺がしがみ付く相手は貯水タンク。確かに汚いかもしれないけどやめろって言う前にその手を止めてくれよと思った。これは正論やろ。そしたら予想外にまたまた恥ずかしい答えが返ってくる。

「だって感じてる謙也に抱き付かれるとか、俺貯水タンクにも嫉妬してしまいそうやわ」
「お前…よおそんなん言えるな」
「え?あ、もういいかも。入れるで謙也」
「っ、言わんでええっ…」

白石のものが壁を押し退けながら入ってくる感覚に何回やっても慣れない俺は腰が引ける。おまけにちょっと苦しい。解してくれたお陰で痛みは無いけど入ってくる圧迫感は相当。こればかりはどうしようもない。それが白石のものだと思うと嬉しくもあるのだけど。愛のパワーとでも言おうか。いや、白石じゃないからそんな恥ずかしいことは言えない。

「謙也の、キツくて好き」

色っぽく息を吐きながら白石がそう呟いた。なんやねん、俺のケツが好きなんかよ。こっちは気持ち悪さで一杯一杯になってんのに。そう思って少し腹が立ったのも一瞬。腰を埋めながら抱き付いた白石がめっちゃ気持ちいい、と余りにも幸せそうに言うもんやからつい嬉しくなってしまう。俺がなんかしたわけじゃないのに、俺が気持ち良くしてあげてるみたい。

「白石、動くのもうちょっと経ってからにして」
「ん、ええよ。辛い?」
「ちょっと。すまん」
「ええって。謙也にも気持ち良くなって欲しいから俺待つよ」

包帯を巻いた手で、まるで小さい子供をあやすように俺の頭を撫でる白石。大丈夫やでー謙也、俺が付いてんで。ってだからなんでそんな恥ずかしいこと言えんねん。嬉しいけど恥ずかしさが勝った俺は返事なんか出来るわけもなく、もういいから、と優しい投げ掛けを遮った。

「本間にええの?」
「も、大丈夫やから」
「じゃあ動くで」

その一言を合図に動き始める。まだキツいせいか、覆い被さりながら中をゆっくり移動する白石のものが手に取るように分かって恥ずかしさで死にそうやった。それにしばらく耐えれば太さに慣れた穴と白石の先走りで滑りが良くなる。俺も段々気持ち良くなってきてやっとセックスしてる気になれる。それは白石も同じなようで、同時くらいに腰の動きが早まった。

「あ、っ…、ん、」
「謙也、気持ちいい?」

そんなこと聞かれたって素直に答えれるわけない。すっかりこの快感に支配されつつある俺は翻弄されながらも白石が背中から離れていくのが分かった。

「や、白石っ、あかんって、」
「嘘付き、なんもあかんくない癖に」
「変な、こと言うなぁっ…」

腰を掴んで打ち付けるそれにいちいち体が揺れて俺は嫌やと悲願したけど、白石は聞く耳を持たない。白石が見てる。俺がこんなになっている姿を白石が見てる。それだけが頭を埋め尽くした。そんな大きな音も出さんといて欲しい。恥ずかしいから。

「辛いやろ?もっと声出しや」
「アホ、ここ、学校やぞっ…」
「人来やへんだら部屋と変わらん」
「んなわけ、あるかっ」

なんでこんな所でセックスなんかしてるんやろう。それも授業までサボって。今頃そう考えるのは明らかに遅すぎる。ある意味定番中の定番“学校のトイレ”ってこんなん学生時代の恥ずかしい思い出になること間違いなしやんか。

「大体付いて来たってことは期待してたんやろ。自分でパンツ脱いで」

そうですその通りです。手を引っ張られて嫌や嫌や言うときながら足はしっかり白石に付いて行ってました。雰囲気に飲まれたとはいえ、もう返す言葉もございません。都合が悪くなった俺は白石の言葉を無視したけどそれでもまだ問い詰めてくる。

「そんなええの?俺のセックス」
「お前がっ、するから、やろ、」

俺がこんねんも必死になって耐えてるのに白石は余裕の笑みを浮かべながら突いてくる。相変わらず饒舌やし。なんでなんやろ、この差は。ウケに比べてタチって気持ち良くないもんなんかな。夢中になってんのって俺だけなんかな。そう考えたらちょっと悲しかったけど、真っ昼間から学校で盛る白石にそんなこと言ってやらない。だってまるで俺が心配してるみたいやん、白石のこと。そんな態度を取ったらこいつは絶対調子に乗るから、言わない。

「謙也…」
「え…?」
「誰か来る」
「え、」

見つかる。そう思った次の瞬間には白石の手が俺の口を塞いでいた。けど頭が真っ白になったのもその時だけで、俺の口を塞ぐその手には先ほど白石自らが出した精液が付いていることに気付き思わず目を見開いた。顔や口にドロドロしたものが付く。

「!!」
「ちょ、謙也うるさい」
「んっ、」

手を離して欲しくて顔を振ると、覆い被さってきた白石の下半身が密着してより深く入った。こんな時なのに感じてしまう。だからバックですんのは嫌やって言ったのに。もう人が来るとかよりこっちに気を取られてるからな。

「っ…!」

苦しさと快感で涙が零れた時、やっと白石の手が離された。

「すまん謙也。俺の勘違いや」
「お前なぁ、なにドロドロの手で塞いでくれとんねん!!」
「あ、すまん。やってそんなん言うてる場合ちゃうかったやん」

いや、けど結局お前の勘違いやったやんけ。それで顔に精液付けられた俺の気持ち考えろよ。大して謝る気の無い白石に半分呆れながら言い返すと、あっけらかんとした顔をされた。

「ええ加減にせえよ」
「ほんじゃついでに舐めて」
「ちょ、」

抵抗する間もなく口に指を突っ込まれた。いやいやいや、可笑しい。なんでそうなるん。ほんじゃの意味が分からへん。いくら白石といえども人の精液なんて飲んだことのない俺は慌てて手を引き抜こうとしたけど、準備のいい白石に腕を固定されていてそれは叶わなかった。逃げれば舌を掴むように絡めてくる。それが苦しくて仕方無く指を舐めた。

「ごめん謙也、泣かんといてや」
「お前のせいやろ!!」
「ごめんって。そんな嫌やった?」

そりゃあ彼氏のやと思えば大丈夫かもしれんけど、いきなり精液の付いた指を突っ込まれれば誰だって戸惑うやろ。ただ面と向かって嫌やと言うのはなんだか白石が可哀想な気がして。だから言わなかった。

「だって謙也逃げへんだから」
「逃げれるわけないやろ!」
「なんでなん?」
「なんでって…」

白石と繋がってるから。それしか答えはないけど口に出すのは余りに恥ずかしくて言葉を濁した。やのになんで?ってしつこく聞いてくる白石は心底根性悪いなと思う。俺の態度で察しろや!

「なぁ、なんでなん?言うてくれやな分からん」
「ほんなら分からんでええ!!」
「意地悪」
「あっ、」

ぐっと腰を押し付けてきたのは絶対わざと。どっちが意地悪やねん。顔を近付けられて反射的にそっぽを向いた俺にじゃあもういい、謙也なんか知らん、って何故か勝手に拗ねた白石は荒々しく腰を打ち付ける。前言撤回や。白石なんか全然可哀想じゃない。そう強がったけど、痛いくらいにぶつかる腰から優しさが感じられへんくて、少しやり過ぎたかなと後悔が生まれた。

「や、嫌やっ、…白石、痛い!」
「感じてんやんけ」
「ちがっ、」
「変態」

辛いくせに相手が白石だと感じてしまう。そんなことくらい自分でも気付いてたけど、本人に言われるのは悔しかった。めっちゃみっともないやん俺。どこまで白石に惚れてんねん。押し寄せてくる波に耐えられそうにない俺は素直にイきそうだと告げる。すると何を思ったか、未だ苦い味が広がる俺の口に白石の舌が入り込んできた。

「謙也、ごめんな」
「ん、っ…、」
「やって謙也可愛かったんやもん、俺の精液付けて。謙也ごめん」

後から謝ってくるとか本間ずるい。卑怯者。可愛いって言われてキスされて、それだけで俺は安心してしもてるやんか。俺もごめんって言いたい。初めから白石の方が何枚も上手で、俺はそれに翻弄されてただけやった。

「あ、あっ、も、あかんっ」
「イってええよ、俺もイくさけ」
「ん、―――っ!!」

直前俺のものを扱くと同時にまたキスをされ、声にならない声を上げて達した。精液は白石の手によって受け止められる。学校のトイレでしてしもたし。恥ずかしいセックスに今更ながら我に返ったけど、貯水タンクに体重を預けたていた俺に重なるように白石が倒れてきたため回想はそこで終わった。繋がったまま二人で余韻に浸るのって、なんか幸せかもしれん。

「謙也、汗」
「汚いから、触んな…」
「汚ないよ謙也のやもん」

狭い場所で立ったままの行為は結構辛くて、まだ授業が残ってるのに二人とも汗をかいていた。俺の前髪を掻き上げる白石の手を見て汚してしまったことを思い出す。

「あ…、それ」
「ああ、便器汚したら流石にあかんと思て手で受け止めたで」
「すまん、はよ手洗って」
「やから汚くないって」

そう言って俺の精液で汚れた指を自ら口に咥えて見せた白石に、こいつはキザとかかっこつけとかの次元じゃないんやなと思った。俺は白石の裸を見ただけで情けないくらい取り乱してしまうのにこいつといったら、なにこれ。顔を赤くしながら固まってる俺に白石がもう一言。

「謙也のやったらどんなもんも汚くないよ」
「ア、アホ…」
「やから許してくれる?口に突っ込んだことと…、学校で中出ししたこと」
「………ぁぁぁぁああああああ―――!!!!」

この後便器の上に座りながら処理という名の辱しめを受けた俺は、謙也可愛いんやもんとかふざけた理由でフェラを要求してきた白石の頬を思いっ切りひっぱたいた。涙目になってたけど泣きたいのは俺やアホ!もう学校でなんか絶対せえへん。

20110904
白石はトイレ似合うよねって話。