さっきまでの甘ったるい雰囲気がまだまだ残る中いつもより強引に口を付けたって、その衝動は収まるわけではない。苦みながらなんとか舌を絡ませてくる謙也さんとその距離ゼロミリメートル。この人息が出来てない。窒息死するんじゃないか。別に構わないけどだったらちゃんと言ってよ、俺もすぐ行くから。

「ちょっ…ざ、いぜっ、んっ…、も、」

謙也さんの口の端から涎が垂れる。それが凄く鬱陶しい。なんでこうぼろぼろ溢れていくの。俺はいつも必死に掴んでるのに。何処かに穴が開いてるのかも。勿体無いから指で掬い取って無理矢理口に捩じ込んだ。ついでに中を掻き回すように弄ればさすがに驚いた顔をして力ずくで口を引き離された。なんや、死ぬんじゃないの。

「っは…なに、すんねんっ…!」
「垂れてきたんで」
「指入れやんでもええやろ・・・!」

そう言って謙也さんは、俺が二人の口に戻したものも含まれているであろう唾液を何食わぬように服で拭った。何処までも空気の読めへん人やな。染みになったところに軽く噛み付いたらさっきとよく似たような、珍しいものを見るような、そんな目で見てきた。

「…なにしてるん」
「謙也さん、死ぬ時は一緒ですよ」
「なに言って…んぅっ、…っぁ」

遠くても暗くてもいい、辛くてもいい、俺と謙也さんの二人だけになれるなら何処だっていい。誰の目にも届かない遥か彼方、吐き出された息さえも俺が吸い尽くしてしまいたいの。

20110804