「不本意ですが、仕方がないです。今回は手伝ってあげましょう」
料理が得意ではない自分にとって、それは救いだった。
しかし、それは料理開始直後に間違いだったと思い知らされるということを。
今のアルヴィンは知る由もない。
先月の今日、つまり2月14日はバレンタインだった。
最愛の恋人から手作りチョコを貰い、ヒューバートとアルヴィンはそれはもう嬉しいという言葉1つでは足りない程嬉しく、幸せだった。
そして今月の今日、3月14日はホワイトデー。
バレンタインのお返しをする、とても大切な日。
「というわけで、お返し一緒に作ろうぜ?」
「どういうわけかはわかりませんが、ぼくは遠慮します。というより、わざわざ手作りにする必要ないでしょう?」
「冷たいね、おたく。大好きな兄さんに手作りで返してやろうとか思わないわけ?」
「…ですから、わざわざ手作りにする必要はありません。兄さんは気持ちがこもっていればなんでもいい、という方ですから」
「でもさ、手作りの方が兄さんも喜ぶんじゃない?」
「それは…否定できませんね」
どうせなら、兄が最も喜ぶものをあげたい。
その気持ちはあるのだから、ヒューバートの心はアルヴィンの言葉によって揺れ動く。
そして、数分の沈黙を経て、ヒューバートは答えを出した。
「不本意ですが、仕方がないです。今回は手伝ってあげましょう」
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