02.came down 《今日最下位の運勢は…ごめんなさーい、××座のアナタ。何をやっても全部裏目に出てしまう最悪の日。予想外なハプニングの連続でしょう。…――》 朝仕事に出る仕度をしてて、いつもはBGM程度にしか流していないテレビから自分の星座が最下位だと聞こえてきて思わずそちらの方を見る。 占いは元々信じてない性質なんだけど、最下位なんて言われるとあまりいい気分はしない。 それに、ここ最近は悪魔にでも取り憑かれてるのかと思うくらい悪い事の連続だったから、占いにでも何でも縋りたい状況だった…… 《――…でも大丈夫、そんなアナタのツキを回復させてくれるラッキーアイテムは踵が高めの靴です!》 だから今日は、少しでも良い事があるようにと願かけて、いつもは仕事で履かない高めのヒールを選んだ――― まさかそのラッキーアイテムが最後の最後で“バッドアイテム”に変わるなんて……… 手の中にあるメガネのサンタが拾って渡してくれたヒールを恨めしそうに見ながら、アサギは白い溜息を一つ零した。 この間自分への御褒美に奮発して買って、今朝降ろしたばかりの靴なのだけど…バッドアイテムだし、家に着いたら捨ててしまおう…… 靴に八つ当たりをしながら先程の交差点近くでタクシーを拾おうと手を挙げるも、イヴの夜だからか思うように空車が見付からない。 客が既に乗ってたり、予約や貸切表示ばかり… その上、何故だか分からないがいつもよりタクシーがあまり通っていないのだ。 ……本当にツイてない…… すれ違う通行人は幸せそうなカップルばかり…時間と共に侵食してくる寒さと、傷の痛み…… 惨めで情けなくて…… 潤む瞳に映る景色が滲む……―― ―――そんなアサギの前に、一台のタクシーが停まった。 その時、もうタクシーを拾うのを半分諦めていて手を挙げていなかったし、目に溜まった涙で視界が悪かったのもあって、タクシーが停まったのに一瞬気付かなかった。 何かが停車したのは分かったけど目を手の甲で拭いながらぐずぐずしていると、助手席側のパワーウィンドウが開く音がした。 「おいてめぇ、乗るのか乗らねぇのかハッキリしろ!」 「乗りますッ!!」 運転手からいきなり大きな声で言われて、驚いて殆ど条件反射で返事してしまった。 ちょっと運転手怖い…また悪運のせいでハズレを引いたのかもしれないけど、やっとのこと捕まえたタクシーだし文句は言えない…寧ろ神に感謝しなきゃと思いながらタクシーのドアノブに手をかけた――― |