02
「島が見えましたァ!!」
「あ? 島だァ?」
 云われて振り向いてみれば、ぼんやりとした島の影が目に留まる。
 そこへヒートがソワソワと現れた。
「キッドの頭、どの船からやるんだ?」
 魚人の艦隊は、すぐそこまで迫り、“7500万”の船が右舷の砲台たちをこちらへ向けていた。残りの二隻は、味方の流れ弾に当たらぬよう、迂回しながら近付いてくる。きっとこれが彼らの常套手段なのだろう。
「砲台向けてやがる船は、おれがやる。7500万ベリーの半魚野郎が乗ってんだろ? それと、ウチも砲弾ブッ放してやれ……“5600万”と“6300万”に向けてな! いいか、“7500万”にはとにかく手ェ出すな!」
 後で一人で暴れ、楽しむ為か、とキラーはマスクの奥で苦笑いした。キッドの作戦――と云う名の“やりたいようにやる戦闘”はいつもの事。そして、いつもの事として自分は操舵手へ駆け寄った。
「このまま真っ直ぐ舵を取れ。“7500万”の砲弾の落ち方だと、重い弾で正確さと威力を上げているが、飛距離は出ない。島へ向かって全速前進するんだ」
「おうよ、任せろ!」
 操舵手がニカッと笑い、舵を握り直す。
 島に着くのはまだ時間がかかる……が、着いてしまえば、海上戦を好む魚人たちの戦力は半減する。島へ着かずとも、島へ向かっている事に加え、“7500万”の砲撃範囲から逃れてしまえば砲撃を諦め、親船もこちらへ向かってくるだろう。見張りによれば、親船は前方に砲台ナシとの事だ。
 船を横付けされた後は、キッドが真っ先に乗り込むだろうし、そうなればあっと云う間に制圧出来てしまう筈。
 ――瞬時にそう考え、キラーは周囲へ指示を出す。
(しかし、“島に向かえ”と云っても、あの島がどんなところかはまだ分からないが……)
 決して届かぬ砲撃により、海が激しく波打ち、船は強く揺れる。
 キラーは海中から乗り込んできた魚人を次々と獲物で斬り伏せながら、背後に霞む島が何故か気になっていた。
 既に島の近海に入り、感じる気候からすれば夏島。
 故郷とよく似た潮風が吹いていた。










 人魚は陸へ帰らない










 店のドアが開き、カウベルに似た音色のドアベルが来客を知らせた。
「いらっしゃーい」
 のんびりとした声で、ヒゲの間に煙草を咥えたままの店主が客を出迎える。すると、白髪の老人は露骨に眉間に皺を寄せた。

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