08
 エースはこの島のログを貯めずに海へ出ようとしていたが、元々この島には嵐で辿り着いたと云う事だったし、きっと違う島を指していたログに従っての航海中だったのだろう。
 それはともかく、グランドラインを航海する上で一番必要な物はログポースである。
 ◆の左手首にも、ちゃんとログポースが付けられていたが、◆は何かに気付いたようにそれをぎゅっと握る。
「あなたを宿へ運んで、ベッドに寝かせた時にはもうログポースは付けていなかった気がする……倒れてた付近に落ちてるかも――」
「んーイヤ、もう戻れねェ。結構遠くまで来たし、どっちから来たかも分からねェからな。◆のログポースも、もう違う島を指してるんだろ?」
 エースに云われ、◆は手元の指針を見る。先程の島で暫く滞在していたので、とっくにログは貯まっていた。
 すなわち、この指針が指し示しているのは次の島である。
「困ったのはログポースがそこら辺に売ってるモンじゃねェって事だ」
 この海の航海に一番重要なアイテムではあるが、行く先々に簡単に売られてはいない。だからこそ、命と同じように大事にしなければならないものなのだ。
「◆、頼みがあるんだ」
 そこで、エースがフッと笑みを消して真剣な表情になったので、◆は何故か緊張してしまうが、それを誤魔化そうと口をとがらせる。
「また“頼み”?」
「あァ……頼む。――ログポースが手に入るまで、おれと一緒に航海してくれねェか?」
 予想はしていた言葉だったが、◆は今日一日エースに振り回されているのである。とても協力的にはなれない。
「断る! 何で海賊なんかに協力しなきゃいけないの!? いつログポースが見つかるか分からないし、馴れ合いは嫌だし! 次の島まで行ったらそこで別れさせて貰う!」
「……。んじゃァ聞くけどよ、その“海賊なんか”を助けたのは何故だ? 聞いてれば海賊嫌いみてェなのにさ」
 エースは訝しげに◆を覗き込んでくる。
「海賊は嫌いだけど、あなたを助けたのは、その……」
 口ごもる◆に、エースは追い打ちをかけるように、◆の後ろのマストに手をついて近付いた。
「大体、アンタ何者なんだ? 得物を差してるし、おれが“白ひげ”んとこのだって知ってて助けた、驚きもしねェ。女一人であの島を拠点にって一体何を……」
「わ、分かった! 分かったから!!」
 ◆は観念したと云う風に、そう喚いてエースを押し退けた。
「はァァァッもう!! 嫌だけど仕方ない……私のログポースを貸してあげる!!」
 思い切り溜め息を吐いて、◆は左手を上げ、エースにログポースを見せる。
「……ほ、ホントか!?」
 ◆の言葉に、エースはキラキラと目を輝かせ、そのログポースごと◆の手を握った。

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