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「お、おう! おれも寝る!」
 火の加減を確認してから、◆とは少し離れた草の上に勢い良く寝転がる。
「……。おやすみ」
 ぽす、とリュックに頭を預けた◆は、エースの方を見てはいなかったが小さな声を寄越した。
 それが、どこか“あやす”ような声色で、今しがたの自分の言動もあって何だか複雑な気持ちになるが、あまり気にしないでおく。
「おやすみ、◆……」
 姉でも妹でもなく、一人の女性として意識している――否、するようになった相手へ返事をする。
 ――聞けて良かったと思うの、今の話。
(もっと話、聞いて欲しいって云ったら聞いてくれるか?)
 心の奥にあった“欲”を呼び覚ました言葉。偽りのないその横顔を思い出しながら、エースは目を閉じるのだった。



 ――ゴールド・ロジャーにもし子供がいたらァ?
 ――そりゃあ“打ち首”だ!!
「……ス……」
 ――そいつは生まれて来ることも生きることも許されねェ
「……エ……ス……」
 ――“鬼”だ!!!
「エース!!」
 ハッと目を覚ますと、自分に影が落ちている。太陽を背負い、◆が覗き込んでいた。
「やっと起きた……もう! 日も高いのに」
 エースは、やれやれと離れていく◆を目だけで追う。
「夢でも見てたの? うなされてたみたいだけど」
 ◆はリュックからタオルを出して、髪を柔く押さえながらエースを振り返った。どうやら自分が眠っている間に川で水浴びをしてきたらしい。
「ん、あァ……そういやァなんか嫌なモン見た気がする」
 ゆっくり体を起こせば、汗をかいたらしくベタついて気持ち悪い。更に体中が冷えていて何となくダルかった。
(……“鬼”、か……)
 最近は見ていなかったのに、昨夜サボの話をしたからだろうか――どうせなら、サボと戦っている夢とかにしてくれよ、と気怠く伸びをしつつ思う。
「水浴びてくれば? 川に入ったって敵も居ないんだし、力が抜けちゃっても大丈夫でしょ」
 私も居るし、と髪を梳かして云う◆に、エースは「えっ」と声を上げた。
「ってことは、おれが溺れたら助けに来てくれんのか?」
「はあ、気付けばね……その前に新しく火をつけてくれる? パン焼きたいの」

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