06
「……」
 ◆は暫く黙りこくっていたが、ハッと何かに気付いたように顔を上げた。自分の手は、まだエースに掴まれたままだったのだ。
「私はあなたと無関係の人間なの……放してくれない?」
「お、悪かったな!」
 エースはパッと◆の手を放し、悪びれもせずにまた眩しく笑うと、帽子を被り直してスッと立ち上がる。
「おれの船が海軍に見つかったらたまんねェし、急ぐとすっかな」
 ◆に背を向けたエースは、自分が島の何処ら辺に居て、船はどっちの方向にあるかを確認するように辺りを見渡す。
 すぐに把握出来たのか、エースは帽子を抑えると、◆を振り返った。
「んじゃあな、◆! また逢おうぜ!!」
「誰が!!」
 ◆の返事にエースはニッと笑い、クルリと背を向けると、軽やかに屋根の上を渡り飛んで行ってしまった。
「…………はァ」
 白いシャツをはためかせたエースを見送り、小さな溜め息を吐いた◆は裏路地に下りて、未だ海軍達で騒がしい町を宿へと歩いて行った。



 宿へ戻り、身支度を済ませた◆は、背中に背負った荷物になる宝をどうしようかと考えながら宿を出た。
 換金してから島を出ようと換金屋に向かう途中に、何度も海兵達とすれ違う。
「大佐! 先程、町の者から“火拳のエース”らしき男を見かけたと――」
「――!」
 ふと、“エース”と云う単語に足を止めてしまった。
「火拳ン!? ……よし、通報を受けた海賊は死んでいたが“白ひげの息子”を捕えるチャンスだ、各部隊に連絡を! 全力を上げて“火拳”を探し出して捕えろ!!」
「はッ!!」
 海兵達が慌ただしく走っていく中、◆は足を進められずに居た。
(関係無い……私には関係ない……!)
 自分にそう云い聞かせるのだが、どうにもあの眩しい笑顔が頭から離れない。何故か、あの笑顔は消えないでいて欲しいと思ってしまうのだ。
「――ッ!」
 そして、◆は先程のエースのように辺りを見渡すと、意を決し、全速力で走り始めた。
 向かったのは小さな入り江だった。
 エースが去って行った方角をキチンと把握していた訳でもないが、この島で船が泊められそうな場所は大きな港と、この場所だけだったからだ。
「ハァ、ハァッ……!」
 白ひげのタトゥーと船は目に入ったものの、海軍より先にと重い荷物を背負って走って来た為に、◆はなかなか呼吸を整えられず、すぐには声を掛けられない。
「……ッ、エースッ!」

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