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 そんなエースの表情に、◆は小さく吹き出した。
「責めてるわけじゃないから。ただ、任務って最終目標が決まっていて、それを遂行するために尽力するものだと思ってたから。そういうこともあるんだなって思っただけ」
 クスクスと笑いながら自分も肉に口をつける。
 出会った頃と比べてみれば、ずっと笑顔を見せるようになった◆にエースは嬉しくなり、勢い良く酒をあおった。
「んー、普段は“コレを奪ってこい”とか、“アレ知ってるヤツ捜して吐かせろ”とかさ、具体的に指示されんだけどな。今回は“おれ”が受けたし、おれも◆が協力してくれるってんで、だったら大物を持って帰りてェってのもあるな……まァ、そんなに自分の隊を放っておくわけにもいかねェし、帰還の指示が今に出るかもしれねェが――」
 パチパチ、と音を立てる焚き火を見つめているエースの顔は、◆には野望を滾らせる海賊らしいものに見えた。
「本船にも進捗は伝えてるからな。その上で指示される場合もあるし、おれが独断で狙おうとする時もあると思う。途中、情報の移動やありかを嗅ぎつけたら、それを狙ってもいいしな」
「ふうん……結構クルーの判断に任せてるんだ」
 ◆が“海賊潰し”として対峙してきた海賊は、“船長とその手下”という印象を強く感じる者たちが多かった。船長が判断し指示し、船員がそれに従うもの――そう思ってきたので、エースの云う白ひげ海賊団の“自主性”が珍しく思えた。が、それが彼らの強さであるのかもしれない。
「おう! ウチんとこはそういうのを責任としてオモンジテル部分が強いな」
 難しい言葉をさも難しそうに云うエースが可笑しくて、◆はふふっと声を上げた。
「この先、任務をどんなふうに展開していくか考えるのって面白そう」
「……だろ?」
 ――そんなこと、◆が云うなんてなァ。
 エースは◆の言葉に驚いていた。
 以前は、彼女は面倒になりそうなことを嫌がっていた。それはエースという海賊によって引き起こされるものだからというのもあるが――。
 “海賊潰し”と云う稼業については自ら選んだとは云え、好んでやっていたわけではないだろう。
 今でこそ基地の侵入や海兵との戦闘の際、生き生きと動く◆がいるが、独りきりで行動していた時に彼女が笑ったり楽しそうにしている様子は想像出来ない。
 だからこそ、彼女の“面白そう”と云う言葉がエースには新鮮に聞こえた。

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