63
「そうだ、◆。新聞読むか? 前の島での件が載ってんだ」
 起き上がったエースは背中についた砂もそのままに、傍らのバッグから紙の束を取り出すと、◆に手渡し――また寝転んでしまった。
「エースが大きく載ってる」
 一面の写真を可笑しそうに指差す――小さく自分も映っているのだが気付かないらしい。
 この無人島に来る前の島で、エースと◆は“新聞”に取り上げられた事件を起こしていた。
 それ以前にも度々海軍基地に侵入し目的を達成していった二人は、初めこそ追手を警戒していたが、この頃は海軍の隙をついて島を出る以外に特に対策をとっていなかった。
 ログを辿れば◆たちが次に向かう島は分かるだろうが、海軍はそれはしないだろうとエースが判断したからである。
「“度重なる不祥事に事態を重く見た政府は、海軍に対策本部を設置するよう指示”――だって」
 次々と事件を起こす“火拳”と“海賊潰し”。
 その狙いが“海軍基地”および“政府や海軍が持つ機密情報”だと判明し、そしてまだそれは続く――そうとなれば、彼らを追いかけるより厳重体勢で待ち構えるほうが得策だと考えたのだろう。
「海軍も面目丸潰れね」
 他人事のように呟きながらエースを見れば――
「……寝てる」
 エースが突然寝落ちすることにも慣れた◆は、動じることもなく静かに新聞を閉じた。
「基地の警備は徹底されるだろうし、情報の移動もあるかもしれない……狙われそうな基地や船で私たちを待ち伏せする気かも」
 ふう、と息をつき、◆は傍らの得物を手に立ち上がった。
「でも、ま。とりあえず今は追手の心配はナシ……ログが貯まるまでこの無人島にいなきゃだし、食糧と寝床の確保が優先かな」
 足元で豪快ないびきをたてているエースを見下ろす。
「さすが白ひげの息子、一口に“任務”って云っても大仕事ね」
 元々はエースが単独で行うはずのものであり、もっと云えば隊長ではなく二番隊のクルーが負う仕事だったはずだ。
 今は二人で行っているから、ハイリスク・ハイリターンを狙っているのかもしれないが――
「任務の最終的な狙いってあるのかな」
 ざくざく、と砂浜からジャングルのような茂みに入っていく。
 任務を完了するのが早いか、“ログポース”をエースが手に入れるのが早いか。
「…………」

- 63 -




←zzz
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -