62
「……? ――おい、ルーペを」
「はい、船長」
 酒を傍らに置いた彼に、ナースが二人がかりで大きな拡大鏡を手渡す。
「…………フン」
「写真が気になるのかよい?」
 今日の一面には大きな写真が載っており、そこにはエースが“重要機密”と書かれたトランクを持って走り去って行く様子が映っていた。海軍基地を背にしている彼の少し先には、小さく映る女の姿もある。
 白ひげは、写真のエースに拡大鏡を当てているようだった。
「――グラララララ!」
 しかし突然笑い出したため、検診を終えて片付けをしていたナースが「きゃあ!」と驚き、怒ったように彼の太い腕を叩いて行ってしまった。
「突然なんだよい、オヤジ」
「なるほどなァ……本当にコイツァ、おれのバカ息子らしい。グララ! グララララ!!!」
 何やら写真が面白いらしい我がオヤジをマルコが見上げるも、彼はただ、グラララ! とその声で船全体を振るわせるばかりである。
「――? ……全く、息子が息子なら親も親ってかよい……あ、おれも息子か」
 そう独りごちた苦労多き隊長は新聞の束を抱え直し、朝の隊長会議のために騒がしくなりつつある船室へ入っていくのだった。






 旅しているの 広い海
 宝物 探して
 笑っていうの 矢印は
 わたしを みつけて

「◆、ただいま」
 砂浜に座りこみ、ぼうっと水平線を眺めていた背中に声をかける。
「エース」
「また歌ってたんだな、いい声だ」
 振り返った◆にニッと笑うと、彼女は手に持っていたいつものコンパスをパチンと閉じた。
「島の様子は?」
「ん、一通り見てきたがココには人は住んでねェ。無人島だ」
 エースは肩に掛けていたバッグを砂浜に下ろし、◆の隣に腰掛けると、すぐ側に乗り上げているストライカーに目をやった。
「いいのか悪ィのか分からねェが……無人なら通報もされねェし、シャツも羽織らなくてすむ!」
 嬉しそうにそのまま砂浜に寝転ぶエースに、◆は呆れつつも小さく笑ってしまった。何故上半身裸でいられるのかは理解出来ないが、“その背中”を隠したくない理由は解るからだ。

- 62 -




←zzz
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -