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「じゃあ次の任務はサッチのアホが行きたがってたって、オヤジに伝えておくよい」
「えっ、ちょいとソレは勘弁よ〜」
 焦る様子もなく、ヘラヘラと階段を降りていったサッチを呆れ気味に見送ると、今度は後ろから豪快な覇気と笑い声が響き渡った。
「グララララ!!! 面白ェことやってるじゃねェか、おれの息子はァ!」
 声と図体と、そしてその覇気。全てが大きなこの船の大船長――エドワード・ニューゲート。通称・白ひげが姿を現した。
 朝からご機嫌そうな白ひげがデッキ上にどかりと腰を下ろすと、マルコはニュース・クーから受け取った数部の新聞のうち、大きめサイズのものを彼に手渡した。
「笑ってる場合かよい、オヤジ。任務はきっちりこなしてるみたいだが、いつの間に女を連れてるわ、その女はウチの仕事を一緒にやってるわ――傘下の奴らに訊いてみたが、どこの娘でもねェみてェでよい」
 カサリと新聞を広げた白ひげの下にナースたちが集まりだす。朝の検診の時間だ。
「最近エースの記事が増えてきたが、どうやらその娘は“海賊潰し”と呼ばれてるらしいのよい。手に入れた情報と任務の進捗はFAXで送られてくるものの、そのことについては何も報告ナシだよい」
 ナースたちの作業の邪魔にならぬよう、マルコはフォアデッキの欄干に寄り掛かり通路を開ける。体温や血圧を測ったり、採血をする忙しそうなナースたちだが、白ひげは特に彼女らを気にする様子もなく新聞を読み、グラララ! と笑った。
「アイツは“その立場なりの動き方”を解ってる男だぜ、マルコ。おれの息子で隊長がどういうことかってのも自分で解ってる――“海賊潰し”の記事も度々新聞で目にしてたが……なァに、心配することはねェだろう」
「おれだってエースの心配なんざしてねェよい。まァ、訳あって共に行動してるんだろうが……あたってる任務が任務なだけに――」
「任務も大事だが、おれァおれの“家族”が一番大切だ。息子が無事に帰ってくるなら、船を離れてる間に何をしようが構わねェよ」
 信じているから任せている、任せているから全ては自己責任。この船の息子たちが自由にできるのは、彼の後ろ盾を手にすると共に責任感を持つからなのだ。
「そりゃそうだがよい……」
 ――だがエースに何かありゃしたらこっちが困るよい。方々に手を打つのもそうだが、この親バカが怒っちまったらとにかく厄介なんだよい。
 その声は口には出さず、マルコは肩をすくめるだけにしておいた。
 現在、二番隊隊長も兼任している一番隊隊長の気苦労を知ってか知らずか、白ひげはナースに窘められつつ酒をガブガブと飲み――ふとその手を止めた。

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