05
 エースは首を傾げたが、今はそれどころではない。
 海軍が島全体に配置にかかっている――実際、ストライカーが見つかって帆を広げられたら、白ひげ海賊団のものだとバレてしまう。そうしたら船は没収だろうし、面倒臭い事になるだろう。
 一方、◆はエースと居るところを海軍に見られたら何と思われるか分からないので、一刻も早くこの男と離れたかった。手を放して欲しい。
「そんなのんびりしてないで、早く逃げたら?」
「おう! そうすっか!」
 しかし、エースは◆を放すどころか逆にギュッと手首を握ると、そのまま◆を引っ張り、走り出してしまった。
「ッえ!? ちょっと何で私まで――!?」
 店内は騒然としていて客が入り乱れている。店員は客をどうにか静まらせようとしているが、野次馬の集まりがガヤガヤとうるさい為、その声は届かずオロオロとしていた。
 ◆はエースに引っ張られるまま、うろたえている店員の隙をついて、窓から外へ飛び出してしまった。すぐそこに居る海兵が振り向く寸前に、エースは◆の腰に手を回し、二人一緒に店の屋根へヒョイッと乗り上げる。
 屋根の上などは、◆も上ったり走った事はあるが、助走も無しに高いところへ乗り上げた事はないので驚いてしまう。エースの身体能力なのか、噂に聞く悪魔の実の力なのか分からないが、凄い男である事は確かだ、と背中を見つめる。
 だが今は海軍に見つかりたくない一心で、掴まれた手だけを頼りに屋根を走っていた。
「……ふう! ここなら見えねェかな?」
 やっとエースが足を止めて屋根の影に隠れると、◆は膝に片手をつき、肩を上下させて呼吸を整える。
「……ッ、もう……ハァ、何で私まで連れて行くわけ!?」
 ◆がキッと睨めば、エースは帽子を外しながら笑った。
「メシ奢るっつったろ?」
「どこが奢り!? あれは食い逃げって云うの!!  ……もう、この町には居られないじゃない!」
 店員に姿を見られたかは分からないが、気持ち良く行動は出来ない。
「ハハハ! 悪ィ悪ィ……おっと」
 ふいに、エースがフッと身を屈めたので、文句を続けようとしていた◆も口をつぐむ。
 二人の足元の路地には大佐以上の位だと思われる男が立っており、その男に海兵が駆け寄って何かを報告しているところだった。
「何!? あの海賊船に乗っていた者共は既に死んでいた!?」
「ええ……ですが金品はほとんど無くなっておりました」
 律儀に敬礼をしながら話す海兵に、男は不可解そうに眉をひそめる。
「――とすれば、賞金稼ぎではないな。海賊同士の争いか、金品目的の盗賊か……」
「住人の話では、深夜にやってきた海賊船は一隻だけだったと。酷い嵐だったようで、船の姿以外の目撃情報はありませんでした」
 海兵達の頭上で、エースは話を聞きながらフンフン、と頷いている。
「へェ……じゃあもしかすると、この島に着いた時点でアイツら死んでたって事もあるかもなァ」

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