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「火拳だ! 捕らえろォ!!」
 窓の下、中庭では海兵たちが落ちてくるエースたちを捕まえようと武器を上げ、待ち構えている。
「もうッ、今日は落ちてばっかり!」
「んじゃ、次は上がるか!」
 そう云うと、エースはダイブを受け止めんとするオーディエンスに、炎と化した腕を突き出す。
「ギャアア!! 熱ィィ!!」
 炎の威力で二人は宙高く上がり、地に足をつける事なく、基地を飛び出す。
「よっと!」
 基地の外に立ち並ぶ店の屋根に下り立ち、エースは◆を優しく下ろした。
「足は大丈夫か? こっから走るが、ついてこれるか、担ごうか?」
「バカにしないでよっ」
 炎のせいで煤けた頬を拭いながら、◆はフンと鼻を鳴らす。
「ヘヘッ、悪ィ悪ィ」
 そう云いつつも、エースは◆の手を握る。
「急ぐぞ、◆!」
「待てェ!!」
 あちこちに飛び移り、屋根や塀を駆けて行く二人のすばしっこさに、海兵たちはついていけず、ついに二人を見失ってしまった。
 消火や重要文書の避難などを指示していたスモーカーも遅れて基地を出てくる。海の方へ逃げていったのは確認出来たが、いくら本部の大佐と云えども、燃える基地を放って、いち海賊を追いかけるわけにはいかない。軍艦を出すのなら尚の事だ。
「クソッ……ポートガスの奴……! あの女も一体何なんだ……!!」
 忌々しそうに吠えた彼の元に、眼鏡を掛けた女剣士が、新しく手に入れた刀を持って現れるのは数分後の事だった――。
「……どうする気なの? こんなに騒ぎ大きくしちゃって」
 なんとか海兵を撒いたエースと◆は、ストライカーを隠しておいた岩場へと辿り着いていた。
 エースの指示で、傍には自分たちの荷物が準備されており、◆はそこへ、フゥと腰を下ろした。
「このまま島の何処かで身を潜めようって云っても――」
「いや、このまま海へ出る」
 ポケットやポーチに突っ込んでいた情報書類を、エースは自分の荷物へしまって背負い、ストライカーへと乗り込んでしまう。
「海へって……そんな事云っても、ログが貯まってないのに無茶な事云わないでよ」
「大丈夫だって。とりあえず、すぐに出航するぞ!」
 海兵に見つかったらまた面倒だから、と急かされ、◆はよく分からぬまま、疲れた体を起こして荷物を背負い、手を借りながらエースの後ろに立つ。
 途端に炎を原動力として左右のパドルが回り、ストライカーは海へと躍り出た。
 基地がやっと鎮火し、捜索班が岩場のロープを見つけた時には、既に舟は水平線の彼方であった。



「――◆、“コレ”、何だか分かるか?」
 島の影も見えなくなり、時刻は昼をとうに過ぎていた。
 少し休憩だと帆を広げ、持ってきていたパンを食べていたエースが、ゴソゴソとポケットから何かを取り出す。ちなみに舟の上では、食べながらの居眠りはさすがにしないらしい。

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