04
 大盛りのパスタを巻きつつ、骨付き肉を齧りつつ、ピザのチーズを口から伸ばしつつ、器用にそう聞いてくるエースに、娘はハァと溜め息を吐く。
「……◆」
「◆か……ん! ◆、ホントにありがとな!」
 太陽のごとく眩しく笑うエースに、◆はドキッとしたが、それを誤魔化すようにパンを齧る。
「どうしてあんなところに、……あなたとあろう人が倒れてたの?」
 白ひげ、と云おうとしたのだろうが、◆は言葉を切ってそう云った。
 周囲に海賊と気付かれぬよう、エースは自分で持っていたカモフラージュ用のシャツを羽織っている。
「いやァ、いきなり大シケになるもんだからさァ。小降りなら耐えられるが、おれの船はシケには弱ェんだ。何とかこの島に着いたはいいけど空腹は半端ねェし、大雨に打たれて疲れきっちまってさ。しかも最悪な事に水溜まりに突っ込んじまったみてェで……水溜まりは能力者にとっちゃァ海と同じだからな! そんで、気ィ失ったみてェだ」
 ハハハハ! と笑うエースは、グビグビと喉を鳴らして酒を飲む。
 ◆は呆れた、と齧りかけのパンを皿に置いた。
 目の前には大海賊・白ひげの息子が居る。
 ここに彼が居ると云う事は、本船も近くに来ていると云う事なのだろうか。何故、二番隊隊長が単身で行動しているのか分からなかったが、深く追求したいとも思わない。海賊とは馴れ合いたくもない。
「ごはん屋さんは教えたし、私はもう帰っていい? お金はここに置いておくから……じゃ」
 ◆は静かに席を立ったが、エースにすかさず手首を掴まれてしまった。
「ちょっと!」
「んぐ、もぐ……ッぷはーッ! まァ待ってくれよ、◆」
 抗議を申し立てるところだったが、エースにニカッと笑いかけられると、どうにも次の言葉が出て来ない。自分の反応に、◆は眉間に皺を寄せた。
 エースは最後の一皿を平らげると、酒を飲み干して口を拭った。
「礼がしてェと云ってるだろ? ここはおれに奢らせてくれよ」
 テーブルに置かれたベリー札を、掴んでいた◆の手に握らせる。
「そんなの必要――」
 無い、と云いかけて、◆は何やら騒がしくなった外に目をやった。
「ん?」
 それを見て、エースも窓から見える外に顔を向ける。
「――海軍か」
 外では、銃や剣を持った海兵が忙しそうにバタバタと走り回っていた。それに気付き、席を立ち上がったり、外を見ようと窓に集まる者で店内はざわつき始める。
「おれの船が見つかっちまったかな」
 それが本当なら緊急事態だと思うのだが、エースはそれ程慌ててもいない。
「違うと思うけど……。ゆうべ、この島に着いた海賊はもう一団居るから、そっちに気付いたんだと思う」
「そうなのか?」
 エースはそう尋ねたが、◆は黙っていた。

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