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(???)
 よく分からぬまま、それでも動かないエースに辿り着くと、その腕を自分の肩に掛け、水面を目指して泳ぐ。それはまるで、水溜まりで気を失っていたエースを宿へ連れ帰った時のようで、◆は不思議な感覚でぶくぶくと気泡を作った。
「っぷはっ!!」
 水面に顔を出し、息継ぎをした◆は、ゲホゲホと咳き込むエースを乱暴にストライカーへ押し上げる。
「……ハァッ、ハァ……っもう、どう云う事……ッ!? 何してんの……!?」
 ストライカーは非常に不安定で軽装備の船な為、エースを押し上げる事は出来ても自分で上手く乗り上げる事が出来ない。かろうじて掴まりながら、◆はごもっともと云う怒りと戸惑いの声を上げた。
「ゲホッ……っはァ、すまねェ、ありがとう」
 そう云いながら、エースが◆を引っ張り上げる。
 荒い呼吸を繰り返しながら、◆はマストに寄りかかり、その後ろのマストの帆をエースが広げた。
「ありがとう、じゃないでしょ……! あなた死にたいの!? 能力者は泳げな――」
「“関係無い”じゃねェだろ」
「はあ!?」
 次から次へと、突拍子のない言動に◆は苛立ちを隠す事なく声を荒げる。
 エースは濡れた髪をかき上げながら、真剣な表情を見せた。
「おれは、◆がしぬのが嫌だから、こないだ助けた。仲間だと思ってるから心配したり世話を焼いてる。◆も、おれがしぬのが嫌だから、今助けてくれたんだろ?」
 は、と眉間に皺を寄せる◆の前髪からポタリと水滴が落ちる。
「……それで? 命綱つけてそんな風に人を試すなんて卑怯じゃないの!?」
 顎でエースの足元を指せば、ウンウンとエースは頷く。
「ん、今◆が怒るのも当然だ。謝るよ」
「それに、この船はエースの能力がなきゃ動かないし……そうやって、突然話を持っていくのは強引でしょ!! 海賊はバカだと思ってたけど、ここまでだなんて!!」
 助けなきゃ良かった、とそっぽを向いた◆は、手の甲で額を拭い――そのまま目を覆って俯いた。
「……っ、◆……?」
「バカ……ッ、白ひげの息子でも知ら、ないっ……溺れてしね……っ」
 俯いた◆の影にはポタポタと水滴が落ちるが、それが海水ではない事にエースは気付き、目を見開いた。
 かなり辛辣な悪態をつかれたが、そんなものは気にならない。
「おい、◆……? ごめん、な? な、泣いてるのかっ?」
「ちが、う……び、びっくりした、だけ、で――」
 エースは思わず、震えるその肩を抱きしめていた。
「っ、ちょっと……っ!」
「いや、ごめん、◆。ホントにごめんな」
 濡れた身体同士で、非常に気持ち悪いのは分かっているのだが、エースは更に丸まった背中に手を回し、ギュと力を込めた。
「うん、◆を試したのはホントだ。おれを助けてくれるか……助けてくれたら、おれと◆は無関係じゃないだろってこじつけようと思ってたんだけど。ごめんな……怖ェ思いさせちまったか」
「べ、つに……怖いとかそんなんじゃ……」
 っく、としゃっくりと上げる◆の濡れた髪をすくように撫でる。

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