03
「……ん……」
 シャアッとカーテンを引くと、その音と差し込んできた明かりで、娘は目を覚ましたらしい。少し身じろぎ、ハッと体を起こした。
「あ、どうもお早うございます! おれの名はエース! アンタ、おれを助けてくれたのか?」
「――ッ!!」
 エースは礼儀正しく頭を下げて名を名乗り、警戒心ゼロの笑顔を娘に向ける。が、娘はサッと顔を背けて、部屋の奥の方を指差した。
「服と帽子……バスルームに吊るしてある」
「あ、あァ……すまねェ」
 そう云えば下着一枚だった、とエースは苦笑いを浮かべてバスルームへ走った。
 バスルームには、エースの服と帽子、靴の他に、娘のものと思われる服が干してあった。
「そういや昨日は大シケだったな……」
 とりあえず色々身につけて、帽子を回しながら部屋に戻って来ると、自分の荷物がテーブルの上に置いてあり、娘は部屋を出ようとしていた。
「あ、オイ! アンタ! おれを助けてくれたんだろ? 礼くらいさせてく……」
「……?」
 突然言葉を切ったエースの様子に、娘は怪訝そうな顔を浮かべて振り返る。
「何なの……?」
 立ったまま動かないエースに近付いて、そっと顔を覗き込んでみた。
「――は! 寝てた!」
「……は?」
 ますます意味不明と云う顔でエースを睨む娘に、エースはニカッと笑った。
「助けてくれてありがとうな! おれの名はエース!」
「……それは聞いた」
 すると、エースは娘の手を握ってブンブンと振る。
「助けてくれた女に礼の一つもしねェんじゃ、オヤジに怒られちまう! メシでも奢らせてくれよ!」
「いいえ、結構。それより早く出てって? ここに白ひげ海賊団の二番隊隊長が居ると知れたら、私もこの島に居られない。私はまだここを拠点にするつもりなんだから」
 娘は冷たく云い放ったが、さして気にならないのか、エースはハハハ! と笑う。
「そっか、アンタおれの事知ってるんだな……あー、でもよ、一つ頼みを聞いてくれねェか?」
「……何?」
 聞くつもりはない、と顔に書いてある娘だったが、エースは構わずに片手を腹に当てて弱々しく笑った。
「腹が減って死にそうなんだ――メシ屋、連れてってくれ!!!」



「……」
 町の一番大きなレストランに、エースと娘は居た。
 エースはガツガツと食べまくり、時折静かに黙ったかと思えば、また豪快に食べ続けた。
「んぐ! あ、そういやァ、アンタの名前聞いてなかったな、何てんだ?」

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