15
「んでさ、なんか食いてェと思ったんだが宿の人も掴まらねェし、外に出る訳にもいかねェよな〜って思ってたら、外が騒がしくなって」
 向かいのソファに座った◆は部屋に備え付けのティーセットでお茶を淹れながら、注意深くエースを観察していた。
(カマを掛けようったってそうはいかないんだから……)
 ◆の鋭い視線にも気付かず、エースは話を続ける。
「部屋の窓から外を見てみても何も分からなくてさ、腹は減るし……そんなこんなで気付いたら寝てたんだよな、ははっ」
 おれ何処でも寝るからさァ、と笑うエースは差し出されたカップを受け取り、熱い紅茶を啜る。
「◆は夜中、何とも無かったか?」
 そう訊ねてから、◆を見たエースだったが、その腕に白い布が巻かれている事に気付き、目を丸くした。
「オイ、どうしたんだ、その包帯……! 怪我でもしたのか!?」
 袖の長い服を着ていた◆は、それでも目ざとく見つけられてしまった事に心の中で舌打ちをする。
「何でもない……ちょっと転んだだけ」
 服の袖を引っ張りながら、そう答えた◆だったが、エースは慌てたように立ち上がり、◆の傍まで来ると包帯の巻かれている腕を掴んだ。
「ッた……!」
 強く掴まれた訳ではないが、傷に響いて◆は小さく声を上げる。
「痛ェんだろ!? 転んだっていつだよ、どのくらいの怪我なんだ!?」
「は、放して……!」
 見れば、◆は手や腕、足など所々に小さな傷を作っていた。
「ちょ、コレ大丈夫か? 他にも結構傷があるし医者に行った方がいいんじゃ――」
「大丈夫だから放してってば!!」
 ブンッと勢い良く腕が振られ、エースは◆の腕から手を放した。
 その腕を庇いながら、◆はソファから立ち上がる。
「あなたには関係無いって何度も云った! 怪我するのは私の勝手、別に気にして貰う義理も何も無いの。ああ、ログポースは壊れてないから安心して。……さ、お腹空いてるんでしょ、早く食べに行ったら?」
 突っぱねるようにそう云われては、エースは何も云い返せない。
 そうする、と短く頷いて立ち上がると、ドアへと引き返す。
「明日の昼に出発するからな、ゆっくり休めよ」
 ノブを回して外に出る間際、少しだけ振り向いたエースはそう云い、出て行った。



 翌日。
 陽が高くなるとログも貯まり、指針は海の彼方を指した。
 ストライカーをメラメラの能力で動かす際は、◆はエースの後ろ、マストが出ている部位に立ち、エースの肩に掴まって乗っていた。
 元々、身体能力は高い方であるし、慣れればそんな所に乗っている事も苦では無くなったが、昨日の今日で気まずい空気のまま、エースの肩に掴まらなければならず、◆の渋い顔には潮風が当たる。

- 15 -




←zzz
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -