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「……偶然か、必然か」
 シャワーに打たれながら何気なく言葉にしたのが、白ひげに話せば「グラララ」と笑われそうな疑問である事に気付き、小さく自嘲する。
「どうでもいいか、ンな事――」
 エースは肩をすくめると、わしゃわしゃとその黒髪を洗い始めた。



「おーい、◆ー。居るかー?」
 シャワーを浴びて一通り支度を整えたエースは、隣の部屋のドアの前に居た。
 何度かノックをし、間延びした声で呼んでみれば、少々面倒くさそうな返事が返ってくる。
「お、まだ居たんだな。良かった! メシ食いに行こうぜ」
「……一人で行けばいいでしょ。私はお腹空いてないから」
 予想通りの反応に、エースは苦笑する。
「まァ無理にとは云わねェけどさ。明日ログが貯まるんだろ? 昼には出るから今の内に食っておいた方がいいと思うけどな」
 食料は持てるだけ持つつもりだが、如何せん船は一人用。そこに二人も乗っているのだから、ストライカーが耐えられる重さは知れている。それに万が一の為、なるべく船が云う事を聞くようにしておきたかった。
「食べたくないの」
 しかし、返って来る言葉は変わらない。
「……具合悪ィのか?」
 ひょっとして、とエースが訊ねる。
「お前、なんか様子がおかしいぞ。メシが食いたくねェってのもそうだが、声が変っつーか……」
 僅かな時間しか共にしていないのに鋭いところは、さすが隊長と云うべきか――◆は顔をしかめた。
「別にいつもと変わらないよ。あのね、お腹空いてないって云ってるでしょう?」
「……ならいいけどよ……じゃあ、ちょっと話出来ねェ? 文字通り“旅は道連れ”の仲だけどさ、ちょっとは仲良くなりてェんだ」
 海賊などと仲良くする気は毛頭無い、馴れ合いは嫌だとエースにも云った筈だったが、◆は暫し考える。ここであまり拒否をしても怪しまれるだけかもしれない、と。
 白ひげの息子・二番隊隊長の事だ。心配するフリをしてこちらの様子を窺おうとしているのかもしれない。互いにまだ信用出来ない仲なのだし、もしかしたら自分に寝首を掻かれるかもと警戒しての事だろうか。
「……」
 はァ、と溜め息を吐いて、◆はベッドから腰を上げ、部屋のドアを開けた。
「お、」
 ドアが開いた事に、エースは驚いたらしい。◆にしては意外だと思ったのだろう。
「入っていいのか?」
 無言でソファへ向かう◆の背中に声を掛けるが、返事が無いのはいつも通りだったので、エースは少し畏まりながら部屋へ入る。
「昨夜はよく眠れたか? いやァおれさ、腹が減って夜中に起きちまって」
 何気なく話し出したエースの言葉に、◆はビクッと振り向いた。
 エースはその様子に首を傾げるが特に気にはせず、そのままソファへと腰掛ける。

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