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 健やかにベッドで眠りこんでいたエースだったが、睡眠欲よりも食欲が勝ったらしい。
 靴も脱がず帽子も被ったままで、どれだけ眠かったのだろうと苦笑する。
「ふァ〜……とにかくメシだメシ!」
 とりあえず顔を洗い、支度をして隣の部屋へ向かう。
 しかし、ノックをしてみても返事が無い。
「◆も寝ちまってんのかねェ」
 困ったな、とボリボリ頭を掻いて突っ立っていると、従業員の一人が通りかかり、エースの様子に気付いて声をかけてきた。
「お連れ様なら、すぐに外出されましたよ?」
「そうなのか!? ◆のヤツ、休まずによく動けるもんだなァ」
 感心したように、◆の部屋のドアを見つめていると、従業員がニコリと笑った。
「もしお客様も外出されるのでしたら、鍵をお預かり致しますが」
「お、じゃあ頼むよ」
 持ったままだった鍵を女に預け、エースは宿を出た。
「しっかし……何処行ったんだ? まさか逃げた訳じゃねェだろうが……」
 それは完璧に困る事である。◆が居なくなってしまったら、エースは二進も三進も動けなくなってしまうのだから。
「オヤジ達を呼ぶのは忍びねェもんなァ……」
 しかし、◆が自分を見捨てるような事をするとも思えないし、ログが貯まらなければ◆も動けないのだから、この島の何処かには居る筈だ。
「一人で食うより一緒に食った方がいいしな、早く◆を見つけてメシ食いに行こう!」
 ぐうぐうと鳴る腹を抑えながらエースは辺りを見渡し、町へ繰り出して行った。



 二枚の手配書に載っている海賊らの船や、居場所を掴んだ◆は、次に海軍の駐屯基地や派出所を探してみた。しかし、この島には海軍は居ないらしい。
 海軍は自分にとっては敵ではないのだが、なるべくなら自分を知られたくはなかった。なかなか噂になりつつある“賞金狙いではない海賊狩り”の顔を知られたりしたら色々と面倒な事になる。それに、今はエースと行動している身――本当に面倒臭い事になったものだと、◆は溜め息を吐いた。
「そろそろ宿に戻って休まないとマズイな……」
 疲労の色が見える自分の顔を、店先のショーウインドウに映して呟く。と、後ろにオレンジ色の帽子が見えた。
「あ、」
「おっ、◆! ここに居たのか!」
 振り返ると、エースも自分に気付いて駆け寄って来る。
「探したんだぜ、起きたらお前は外出したとか云われてさ。メシ食いに行こうっつったのによ。もしかしたら逃げたんじゃねェかってビビったけどな」
 ひと眠りして元気になったエースの勢いに、◆は眉をひそめる。一人の時間もつかの間だった。
「……私は約束は守る方なの」

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