10
 あまり重い荷物を持っていると自分が疲れる以上に、エースに負担がかかる気がして嫌だった。それに、この宝が見つかって怪しまれるのも面倒である。
「あの人はもう寝ただろうし……換金屋さん探そ」
 邪魔になる荷物はテーブルに出し、ガシャ、と◆はリュックを背負い直すと部屋を出た。
 久しぶりに一人になって町を歩くと、ホッとする。
 エースは嫌いではないーーと思うが、海賊にそう易々と心を許せるものでもない。陽気で気さくで、話の途中でいきなり眠るし、警戒を怠りそうにもなるが、そんな彼でも“白ひげ海賊団二番隊隊長”なのだ。
「でも何で隊をほったらかして、一人で行動してるんだろう……」
 聞いたら答えてくれるだろうか。しかし、自分にも云えない事があるので何だか聞き辛い。
 そんな事を考えていると、換金屋を見つけたので足を止めた。
 鑑定して貰っている間に、暇そうに帳簿をつけている男に声をかける。
「ん? 何だい、嬢ちゃん……見かけない顔だねェ」
「この島のログはどれくらい? それと、この島に今海賊は居る?」
 ◆の質問に、男は納得したようにハハァと頷いた。
「嬢ちゃんは賞金稼ぎだな? そうだなァ、海賊はコイツと……コイツらが居るよ。ログは二日さ」
 壁に貼ってあった手配書を男はバリッと剥がすと、◆に渡してくれる。
「うん、そんな感じ……」
 曖昧に答え、手配書を眺めている◆を珍しそうに見つめていた男は、◆の腰の剣に目を留めた。
「得物は剣か。気を付けなよ嬢ちゃん、ソイツは能力者って聞いてる。普通の攻撃が効くか分からねェからな」
「そうなの? めんどくさいなあ」
 男は◆の言葉を聞くとワハハ! と笑った。
「ほれ、嬢ちゃん。終わったとさ」
 そしてちょうど換金が終わったらしく、鑑定士に渡された紙を見ながら、男が目の前のカウンターに札束を幾つか積み上げる。
「稼ぐのもいいが、せっかくの別嬪なんだ。男でも捉まえて青春しなきゃァ勿体無いぜ?」
「ふふ、ありがと!」
 初対面でそんな事を云われるとは思わなかったが、◆は愛想良く笑って札束を袋に詰めると、リュックにしまって背負い、礼を云って店を出た。
「青春、ね。そんなもの要らない……私にはやる事があるんだから……!」
 誰に云うでもなく、◆はポツリと呟くと、海賊共の偵察も兼ねて町を探索しようと足を進めた。



「ぐおー……ん、んー……ん? がーっ……ン!? っは、腹減った!!!」
 ガバァ! と、勢い良くエースは起き上がった。

- 10 -




←zzz
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -