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 そんな行動にビクッと反応する自分に、◆は顔をしかめた。
「だ、け、ど! 私は海賊じゃない。“白ひげ”や、海賊の揉め事には巻き込まないで。いざとなったら私は“白ひげ海賊団二番隊隊長に脅されて航海の案内をさせられていた、哀れな一般人”だからね! いい!?」
 ◆がそう云うと、エースはプッと吹き出して◆から離れた。
「……何?」
 小さく睨めば、エースは可笑しそうに体を揺らしながら、◆にまた眩しい笑みを見せた。
「あァ分かった! ありがとな、恩に着るよ◆! ……っぷ、ハハハハ……!!」
「……もう、何なの……」
 訳が分からないと、小さく零した◆は、笑い続けるエースの背中を見つめながら、そっとマストに寄り掛かり、本日何度目になるか分からない溜め息を吐いた。



 ログポースが指す方角へストライカーを飛ばして丸一日。
 そんなに航海せずに済んだものの、エースは酷く疲れたようだった。◆も慣れない小さな船に揺られ、狭いスペースを緊張して座っていた為に、疲労は隠せない。
 それでも、すぐに二人はコンパスを扱う店を訪ねた。
 そこそこ大きな島で、品揃えは割と良い店だったが、やはりログポースは無いと首を振られてしまった。
「◆、疲れただろ? 宿取ろうぜ」
 エースはへらっと笑って、緑の鞄を背負い直した。◆に云われてシャツを羽織っている。
「……まあ、ほとんど眠れなかったけど」
 あんな船でよく航海なんか出来るな、と◆は思いながら、宿へ入るエースについていく。
 一人の時は、夜になっても島に着くまでは走っていたらしい。が、今回は◆が乗っているのでそんな無茶はしない。
 メラメラで走っている時では落ちつけるスペースは無いに等しく、◆が眠くなれば、帆を張って錨を降ろした。とは云っても、安心して眠れる場所なんて無いし、よく眠れてはいない。
 このままだと過労でダウンしそうだな、と◆は溜め息を吐いた。
「ほい、◆」
 ぼんやりとしていた◆に、エースは鍵を投げて寄こす。
「一応、まだお互い慣れてねェしな、二つ部屋を取った」
「当たり前でしょ」
 エースは◆の冷たい言葉を気にする事もなく、取った部屋まで急ぎ足で歩いて行く。きっとすぐにでもベッドに飛び込みたいのだろう。
「じゃあ◆! おれはひと眠りするからさ、起きたらメシ食いに行こうぜ」
 そして、◆の返事も聞かずに部屋へと消えてしまった。
「……ひと眠りってどれくらいだろ」
 そう呟き、◆も部屋へ入る。
 シャワーを浴びたりベッドで一休みもしたいところだったが、とりあえずは宝の換金だ。

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