07
「……お、おい……?」
 その様子に気付いたのか、女は抱きついたまま顔を上げた。その綺麗な顔立ちに似合わず、愛嬌のある少し子供っぽい笑みを浮かべる彼女に、やはりドレークは釘付けになってしまう。
「ふふっ、ごめんなさい……だけど嬉しい! ずっとお会いしたかったんです……X・ドレーク船長に!!」
 ドレークは自分の腰に巻きついた彼女の腕をやんわりと放しながら、首を傾げた。
「おれに? 申し訳ないが、何処かで会った事が……?」
「あっ、いいえ! 私は見かけた事はあるけれど、ハッキリと対面した事は無いです。一方的に私が会いたかっただけだから」
 名残惜しそうに離れる女は、本当に嬉しそうに笑った。
「三日前にドレーク海賊団の船が島に着いたって聞いて。今日ログが貯まるんですよね? だから必死に島中を駆け回ったの。それなのにアイツらに絡まれて――でも、そこを助けてくれたのがドレーク船長だなんて!」
 ふふっと笑う女に、ドレークはどう返して良いか分からず、とりあえず歩き出す事にした。
「では、先程云っていた“探している人が居る”と云うのはおれの事なのか」
「そう、ドレーク船長ですよ。ああ、本当に会えて良かった!」
 今日を逃しても同じ航路を辿れば同じ島に着くだろうが、なにぶん、自分はログポースの通りに動かないようにしているから――と、女は云った。
「この島にもね、エターナルポースで来たんです」
 肩から提げた鞄から、エターナルポースを取り出してみせる女に、ドレークはまた首を傾げる。
「何故そんな面倒な事をしているんだ? “エターナルポース”は高価なものだし、簡単に手に入る物ではないはずだ」
「確かに値は張るし、面倒ですね……でも“ログポース”に従っては動けなくて。島を転々としていてーー」
 その言葉にドレークは少し思い当たる事があり、もしやーーと思う。
「別に追われているとかじゃないんですよ! こう見えても私、小説家なんです」
 ああ、やっぱりな――と、ドレークは苦笑した。
 この、ハッとするような端整な顔立ちは、まさに“別嬪”で、“そう”でなければおかしいくらいなのだから。
「フフ、そうか……。では、お前の名を当ててみせよう」
「え?」
 ドレークの言葉に、女はキョトンと足を止めた。
「お前が、“◆”なのだな」
「――! どうして……?」
 今度はドレークが笑う番だった。
「昨日、この街の市場で古本を買った。“正義を背負う海”と云う小説だ」
「それ……!!」
 一瞬嬉しそうな表情を見せた◆だったが、すぐに訝しげに眉間に皺を寄せてみせる。
「でも、何故その作者が私と……?」

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