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 申し訳ない気持ちはあったが、訊かずにこのまま生活していく事は出来なかった。それに、半ば強制的に云わせた事への申し訳なさより、◆の事を知れたと云う満足感の方が大きかった。
 それは得体の知れない感覚で、船に戻ってくる前から、ドレークの心の中で何度もニヤニヤと顔を覗かせていた。
「…………」
 そしてまた一つ、扱いに困る感情と共に浮かび上がる質問。
 これは、さすがにどう訊ねたらいいものかとあぐねていれば、◆は沈黙から逃れるように、
「もう、いいですか……?」
 と、立ち上がってしまう。
「待て、◆!」
 慌てて、思わず声を上げれば、◆は目をまん丸にして固まる。
「は、はい……なんでしょう、船長……」
「いやな、最後に一つだけ、聞かせて欲しいんだが……その、気になる事があって、だな……」
 云い淀むドレークを、首を傾げて見つめる◆は、仕方なさそうにソファへもう一度腰掛ける。そしてサラリと髪を掛ければ、形の良い耳があらわになった。
「――っ……」
 それに釘付けになってしまい、再び生じる疑問と感情――そして香り。
「◆、気分を害したらすまないが……」
 こんな風に話し始めれば、◆の眉間にも皺が寄るだろう。綺麗な顔がなんだか悩ましいものとなる。
 それを見ているのは、なんと云うか――悪い気はしなくて、ドレークは咳払いで誤魔化した。
「スモーカーとお前の関係なんだが、もしかして――」
 そこまで云えば、◆の肩がビク、と反応した。
「……――いや、……かなり不躾な質問だったな、忘れてくれ」
「ち、違います!! 誤解しないで下さい!!!」
 決まり悪そうに襟足をかくドレークだったが、突然大きな声を上げて◆が立ち上がったので、今度はドレークが目を丸くする番だった。
「お、おい……落ち着け、◆」
「あ、すみ、ません……」
 ◆が感情的になる事はあまりなく、かなり動揺しているのだろうとドレークは観察する。
 再び腰を下ろした◆は、額に手を当てて小さく息を吐いた。
「どうして、そんな事……」
 その声が少し震えていたものだから、ドレークは慌ててしまう。
「そ、それなんだが、先程の港で二人の様子を見ていて、その、ただならぬ雰囲気を感じたのでな……すまない、お前を傷付けるつもりは――」
 うろたえながら、たどたどしく弁解すれば、◆はそんな様子を可笑しく思ったのか目を瞬かせてから、ふふっと微笑んだ。
「ううん……私は大丈夫です。そんな事訊かれると思わなかったからビックリしてしまったの」
 そう云って、眉を下げた笑みを浮かべる◆にとりあえず安心しながらも、ドレークはゆっくりと確かめるように話を進める。
「……おれの勘違いでいいのか?」
「うーん……なんと云えばいいか……」
 先程の余裕の無さは消え、◆は両手で頬を挟み、難しそうに唸った。

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