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 しかし、それはすぐに険しいものへと変わる。
「――スモーカー……」
 ドレークのその言葉に、◆はビクリと振り返った。
「オヒサシブリで……ドレーク“元”少将」
 低い声で形だけの挨拶を述べたスモーカーは、いつの間にか◆のすぐ後ろに立っていた。
 そして、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、その手を◆の肩に乗せる。
「訊きてェ事があってな……ちょっと借りてたぜ」
 その言動と不敵な――そして、文字通り見下ろされている笑みにムッとするドレークだったが、スモーカーを見上げて睨みつけるしかなく、尖った犬歯で唇を噛んだ。
 ドレークの元に早く戻りたい、と思っていた◆はタラップが用意されるのをソワソワと待っていたが、スモーカーに名前を呼ばれ、今度は体ごと振り向いた。
「“貸した分”は返してもらったぜ」
 だからお前を解放するーーと云うように、準備が終わったタラップの方へ、スモーカーは首をやった。
 その態度は未だ不遜なのだが、これが一応の別れになる事は考えているらしく、声色は穏やかだ。
「……ありがとう、スモーカー准将」
 自分を助けてくれた事、その借りを返す機会を与えてくれた事、このまま旧友の別れのようにさせてくれる事――全てを含め、◆はしっかりと感謝を告げた。
「◆さん……」
 スモーカーの後ろで、たしぎも躊躇いがちだったが声を掛けてくれる。
「じゃあね、たしぎ。会えて良かった」
 それに小さく手を振って微笑むと、二人に背を向け、足早にタラップを降りていった。
「船長っ、みんな!!」
 最後の方は段を飛ばし、港へ飛び降りた◆は、集まっていたクルーのもとへ駆け寄った。
「◆、無事かーっ!」
 そこには今日の同行者であったホップとライスも居て、他クルー同様、笑顔で出迎えてくれた。
「ごめんね、二人とも」
「白猟と一緒に居るところを見た時は、肝が冷えたよ」
「そうそう、心配したんだぞ」
 申し訳なさそうに◆が眉を下げれば、ライスは肩をすくめて笑い、ホップには頭をクシャクシャと撫で回された。
「◆」
 そんな中、至って冷静な声が響き、クルーが◆から退くと、ドレークが歩み寄ってくる。
「船長……ご心配お掛けしました……!」
 勝手な行動を叱られると思い、◆は勢い良く頭を下げた。一瞬だが、髪はフワリと舞い、重力に従って頭と一緒に垂れていく。
「っ…………」
 何故か小さく息を飲む気配、そして僅かな間を置き、下げた頭にあたたかい重みを感じた。
「無事で何よりだ」
 少し乱れた髪を撫で付けられながら、落ちてきた声は優しく、促されて顔を上げるが、声とは裏腹に少々複雑そうな面持ちのドレークと目が合う。
 それに僅かに戸惑うものの、これは今云っておかなければと、あの! と、ドレークの隣に並んで軍艦を見上げる。

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