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「スモ――」
「このくらい許せよ」
 少し擦れた声でそう云い、スモーカーは◆の唇を塞いだ。
「――! ッ――!!」
 荒々しいキスはすぐに深いものになる。どんなに逃げようとしても、◆の舌を捕えるところが彼の性格を表す。
「ん……、んん……! は、スモ、カ……っ……!」
 息が苦しくて、途切れ途切れに酸素を求めながら声を上げる。
 ――と。
「スモーカーさん! 港に“ドレーク海賊団”が現れましたァ!!」
 お約束なのか、と◆は朦朧と思う。
 ドアを盛大に開け放してたしぎが駆けこんできた、が、今まさにこの部屋は取り込み中だった。
 ソファでスモーカーが◆を押さえ込み、唇を重ねているのを、たしぎはバッチリと目にした。
「なっ――◆さ、えっ……? ……スモーカーさ、ん……??」
 目の前の光景が衝撃的過ぎたか、たしぎの思考はまだ追いつかないらしい。
「はあ〜〜〜〜ッ」
 スモーカーはようやく唇を離すと、長い溜め息を吐きながら◆の拘束を解いた。
「――!!」
 自由になった◆は頬を赤く染めて息を切らしつつ、弾かれたように立ち上がると口を抑え、たしぎの脇を走り抜けて部屋を出て行った。
 たしぎは呆気にとられて立ち尽くしている。
「ったく、てめェは……ブチ壊してくれやがって……」
 その声は怒ってはいなかった。
 たしぎがそれに気付いて顔を上げれば、スモーカーも部屋を横切り、ドアの方へ向かっている。
「フン……」
 いくら力尽くで抑え込んでみても、到底この手には捕まえられやしない。
 昔からそうだ。◆の心を支配しているのは“別のもの”――解っているが、やはり“モノ”にしたい気持ちは抑えられなかった。
「とんだ海兵に目ェ付けられちまったな、◆……」
 コツコツ、と廊下を歩きながら葉巻を咥え、火をつける。
「お前もまた“そう”なのか……? “X・ドレーク”――」
 その答えが見れるはずと、スモーカーは口角を上げ、甲板へ出るドアに手を掛けた。
「ドレーク船長ッ!」
 甲板に出てみれば、ちょうど◆が船縁に駆けてゆくところだった。
「◆!!!」
 港に視線を寄こせば少数のクルー達と共に、“元少将”であるドレークの姿が見えた。
 その姿は、白いスーツに白い“正義”のコートから、黒い帽子に黒いマントへと様変わりしていた。
「私は大丈夫です! 捕まったわけじゃないの!」
 軍艦の上から◆がそう叫ぶと、ドレークは少しだけ安堵の表情を浮かべた。

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