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「……おれは海軍から堕ち、今は海賊だが内容に興味はある。――貰おう、幾らだ?」
 その言葉に店主はパッと顔色を明るくした。分かりやすい反応にドレークは苦笑してしまった。
「へへッ、まいどあり! いやァ、苦労して探し回った甲斐があったよ、まさかX・ドレークに買って貰えるとはねェ。おれの話を聞いてくれた礼だ、5万ベリーにまけとくよ!」
 その金額にドレークは目を丸くする。
「文句を云うつもりはないが、これは古本だろう。それをまけても5万ベリーなのか?」
 すると、店主はドレークの手元から本を取って紙袋に入れながら笑う。
「この本には希少価値があんのさ、もう重版はされてねェのよ。古本でもバイヤーの間じゃァ最高値10万いった時はあるぜ」
「……期待大、だな」
 苦笑いしながら代金を渡すと店主は上機嫌でそれを受け取ったが、突然、あ! と声を上げた。
「そうだ、買ってくれたドレークの旦那にイイ情報をやるよ」
「……何だ?」
 すると店主はニヤニヤしながらドレークの横に来ると本を渡し、また声を潜めて耳打ちする。
「実はな、さっき仕入れた情報なんだが……この作者がこの島に来てるってのよ」
「この本の、作者がか?」
 店主は深い笑みを浮かべながら頷く。
 作者とその作品についての話を聞き、本も買ったとあって、ドレークも少なからず作者に興味を持ち始めていた。危険を冒しながらも作品を書く作者はどういう者なのか、もし出来るなら話してみたいと云う気持ちはある。
「この本同様、なかなかお目にかかれねェんだぜ? 何しろ見張りを撒くように島を転々としてて、身を潜めて執筆して暮らしてるって話だ。おれはこの本を探してる中で運良く逢った事があるんだが……またコレがかなりの別嬪さんなのよ! 島に来てるなら、もう一度お目にかかりたいね!」
 店主は目の前に思い浮かべているのか、目尻を下げてニョホホと笑うので、ドレークは呆れて息を吐いた。
「別嬪かは別として……一目逢ってはみたいものだな」
 店主はウンウンと頷くが、その顔はまだニヤついている。
「二日前に見たって聞いたから、早くてもログが貯まる明後日の夕刻までは島に居るだろうよ! まァ、まずはその本を読んでみる事だな! 読書にご武運を、ドレークの旦那」
「……色々と話を聞けて良かった、ありがとう」
 逢えるといいな! と云う声を背中に、ドレークは軽く片手を上げる。そして船がある海岸の方へ逸る気持ちを抑え、足早に歩いて行った。

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