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「あの時は……タイミング良く白いモヤが……――っ!!」
 云いかけて◆は目を見開いた。
「やっと気付いたか。そうだ、あれは自然現象によるモヤじゃ無ェ。おれの能力の“煙”だ」
 スモーカーは、やれやれとでも云うように片目を瞑る。
「だから……!」
 ◆も気にかかってはいたのだ。タイミングの良過ぎる白いモヤ、そして何処となく記憶のある香りがしていた事。
 きっとあのモヤが無ければ、ドレークも自分もCP9の六式の前に潰されていただろう。ドレークが云っていたように、あの四人から命を持って逃げられたのは運がいいとしか云えなかった。
「おれはCP9が動くだろうと予測してた。それで常に政府下の奴らの動きを探ってたんで、あの場にも居合わせた……おれの個人行動だがな」
 CP9がいよいよ動くと云う時に、軍艦で気付かれぬようあの島に入ったと云う。
「……ありがとうございます、スモーカー准将……これは大きな“借り”ですね」
 自分の為に、どうしてそこまでスモーカーがしてくれるのか解らなかったが、確実にこれは命を救われたのだ。悔しいが、◆は素直に礼を云った。
 スモーカーは口元を歪ませながら煙を吐き出すと、窓の外をチラリと見てから◆に視線を戻す。
「その借りを返したきゃ、ちょっと付いて来て貰うぜ」
 有無を云わさぬその声に、◆はただ頷くしかなかった。



「あ! オイ、ライス! あれ見ろ!!」
 ドレーク海賊団のホップ、そしてライスがコーヒー豆店へ戻ろうと駆けている時だった。
「なんだ?」
 先程の騒ぎが海軍だった事を知った二人は、すぐさま◆を連れて自船へ戻るつもりで、店へ全力で向かっていたが、ホップが突然声を上げて立ち止まる。
「あれ、◆じゃないか!?」
 クルーが指差す方には、白いジャケットの男について歩く◆が居た。
「本当だ……しかも、あの男――!」
「白猟のスモーカー!?」
 あの十手と立ち昇る白い煙を見れば、遠目でもそれが誰だか解る。
「じゃ、じゃァあの軍艦はスモーカーのって事か!?」
「何故◆が一緒に……捕まったのか!?」
「とっとっと、とにかくドレーク船長に知らせないと!!」
 目の前の光景にパニック気味になるも、とにかくこの状況を船長に知らせる事が先決だと、二人は慌てて来た道を戻って行くのだった。



 島の港に堂々と停泊している軍艦の周りでは、海兵達が忙しそうに動いていた。
 ◆は、そんな様子を懐かしく思う余裕も無く、手錠もされていないのにまるで囚人のように、すごすごとスモーカーに付いて船内へと上がった。

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