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 それから毎朝、コーヒーを淹れて船長室へ向かうのは、◆の毎朝の楽しみになっていた。
 当直が重なったりすると、どうしても出来なかったが、そうでない日は必ずコーヒーをドレークへ届けた。
 キッチンで朝食の支度をするコックが、◆の来る時間にお湯を用意してくれていたが、ドレークが猫舌なのを知らないらしく、いつもアツアツのお湯だった。これは無理だろうと◆は判断すると、すぐに船長室へ向かわないで、少し遠回りをして行き、船長室を訪れる時にはちょうど良い加減の熱さになっているよう気を付けていた。
「お前が持ってくるコーヒーは、いつも飲みやすいな」
 欠伸を噛み殺したドレークがそう云って微笑むのを見て、◆は素直に喜んだ。
 毎朝の楽しみなのは、それだけではない。
 ◆が部屋に行くと、大概ドレークは既に起きている事が多かったが、ごく稀にノックをしても返事が返ってこない時がある。そう云う時にはそっと部屋に入り、眠っているドレークを起こすのだが、それは貴重な体験である。
 無防備なドレークの寝顔を見るのは、きっと限られた者だけだろうし、さすがにマスクをしたままで眠っていないから素顔がよく見れた。綺麗な寝姿に見とれてしまって、コーヒーが冷めている事に気付き、慌てて淹れ直しに行く事も何度かあった。
「島が見えたぞー!」
 次の島は大きな島で、◆は見たい店があったので、ウキウキしながら到着を待った。
 ドレークは船を島の入江に泊めさせ、必要物資のリストをそれぞれ担当のクルーに手渡して上陸させていたので、◆も上陸したいと名乗り出た。
「――島に一人で行きたい?」
 怪訝な表情と声に、◆は慌てて云う。
「別に一人きりじゃなくてもいいんです。ちょっと見たいものがあって……誰かそこまで付き添ってくれれば。このくらいの島だと、海軍や政府の人間にも気を付けなきゃいけないのは分かってます」
 どうしても行きたい店があるのだと云えば、ドレークは溜め息を吐いて周りを見渡す。
「おれが付いて行ってやりたいが、見ての通り仕事が山積みだ……すまないな」
 申し訳無さそうにそう云うと、近くに居たクルーを呼ぶ。
「ホップとライス。来てくれ」
 呼ばれた二人のクルーが、ハイ! と、元気な返事と共にやって来る。
「◆が島を見たいと云うんだが、おれは今手が放せないのでな。付き添いを頼む」
 必要物資以外にも、上陸してからやる事は結構ある。海上の海軍の位置把握や、この島にあるであろう駐屯所の確認、それに政府の動きも把握しなくてはならない。海上で出来ない事で陸で出来る事を、今の内にやらなくてはならないのだ。
 ドレークは四方八方からクルーに声を掛けられ、相談を受けながらも、的確な指示を飛ばす。

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