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 ◆はそれきり黙りこんでしまい、ドレークはなんと云っていいか分からず、二人の間には暫し沈黙が流れた。
 しかし、ドレークは“◆のせいでこんな目に遭った”とは全く思っていなかった。
 どんな人間を船に迎えたのであれ、どんな事件を起こそうとも、それは船に乗せた船長の責任なのだ。その事件のせいで一味が全滅しようとも、それは船長責任。クルーを責めるつもりは更々無い。それくらいの構えでいなければ、海賊団の船長など務まるものではないだろう。
「――◆」
 ふいにドレークが口を開いた。
「この怪我も、今後おれたちが政府に目をつけられる事もお前のせいではない。そもそも、おれは政府下にある海軍から海賊に堕ちた身だ。元から目はつけられているだろう」
 ゆっくりと◆は顔を上げたが、その不安そうな表情を見て、ドレークは◆の頭を優しく撫でた。
「クルーが起こす全ての事には、船長であるおれが責任を取る。お前は分からないかもしれないが、“船長”はそれなりの“覚悟”がいつもあるものだ。――それに、おれは“自分が船に乗らなければ良かった”とは思って欲しくない……クルーの誰一人としてな」
 それに、こんな怪我は慣れていると微笑むと、ドレークはベッドから降り、壁に掛けてあった上着を取る。包帯が巻かれているし、ところどころ痛んで着づらいが、それも慣れたものだ。
「……あの、ドレーク船長」
 最後に帽子を被ったドレークに、◆は躊躇いがちに声を掛ける。
「ん、なんだ?」
 振り返ると◆はまた俯いていた。
「こんな事が起きても……みんなを危険に巻き込んだとしても、小説を書き続けたいって云ったら……怒りますか?」
 ――怒るわけが無い。
 ドレークは笑ってしまいそうだったが、深刻そうな雰囲気に一つ息を吐く。そして◆の脇のベッドにゆっくり腰を下ろす。
「それがお前の“信念”なのだろう?」
 静かにドレークは云う。
「“決して折らせはしない誇り”だと、おれに云った。そして“自分の信念を貫く為におれの船に乗りたい、海賊になりたい”と云った。覚えているか?」
 その言葉に、◆はもちろんだと大きく頷いた。
「おれの下に集まったクルーは、皆が己の信念を貫く為、そしてそれをおれと共に叶えたいと思う者たちだ。お前も変わらない――自分の信念を、おれの船で貫けばいい」
「……船長……!」
 ◆はドレークの懐の深さをこれまで以上に知る事となった。そして、器の大きさも。ついていきたいと強く思える人だと◆は胸が熱くなる。
「おれは◆が書く本の、ファンの一人だからな。書き続けて欲しいと思う……それを守ってやれる船でありたいとも思う。それに、お前の強い意志を持つところはな、おれは好きだ」
「……!!」
 不意打ちに掛けられた言葉に◆は目を見開き、急いで顔を背けた。それは熱くなった頬を見られない為であったが、ドレークは気にする様子も無く、微笑んでいる。

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