24
 船の近くまで来ると、気付いたクルーたちが慌てた様子で降りて来て、ドレークを運ぶのを引き継いでくれた。
 ◆も怪我を負ってはいたが、とにかくドレークを優先にしてくれと船医に云い、クルーに支えられて船に戻りながら、事の顛末を話した。
 ドレークが治療を受けている間に、船は急かされるように出航した。
「――ログが短時間で良かった」
 航海士に、軽傷で済んだ腕の包帯を巻いて貰いながら、◆は安堵の表情で云う。彼の手首にあるログポースは、既に次の島を指している。
「ああ……だが、奴らは政府直下の諜報機関だ。追跡は逃れられないんじゃないか?」
 そう云って包帯を巻き終えた彼に、◆はありがとう、と礼を云った。
「そうね、きっとこれから先も追われる……でも、当分は大丈夫だと思う、多分ね」
「どうしてだ?」
 その言葉に航海士は首を傾げる。
「……なんとなく」
 しかし、◆は肩をすくめて笑うだけで、航海士の頭の上には“?”が浮かんだ。
 その時、自分を呼ぶ声がして、◆は振り向く。
「◆、ドレーク船長が目を覚ましたぞ!」
「本当!?」
 ◆は飛び跳ねんばかりの勢いで声を上げると、もう一度航海士に礼を云い、医務室にバタバタと駆けて行った。
 医務室のドアを小さくノックするとドレークの返事がして、◆は思わずホッと胸を押さえる。
「ああ、◆か……無事で何よりだ」
 痛みに顔を歪めながら、白いベッドから起き上がるドレークを、◆は駆け寄って支えてやった。
「船長こそ! 大事には至らないってドクターが云っていたんだけど、本当に良かった……!」
 ◆がベッド脇の椅子に腰掛け、ドレークが意識を失ってからの事を話した。
「そうか――」
 ドレークは包帯が巻かれた◆の腕を見て、険しい顔になる。
「……すまない。“お前を戦わせたくない”と云ったが、おれの方がお前に世話をかけてしまったな」
 細く見えるが意外と逞しい体つきであるドレークを、一人で抱えて船まで戻ってきたのはかなりの重労働だったに違いない。しかも◆も重傷の怪我を負っていたのだ。
「いいえ、とんでもないです。むしろ――」
 ふと、◆は俯く。
「どうした……?」
 その様子に気付き、ドレークは優しく聞いた。
「むしろ、私の方が謝るべきです……」
「何故だ? お前はよく戦ったじゃないか。お前がやられていたら、今頃おれたちは政府の船でタライ海流に乗っているぞ」
 ドレークは、ハハと笑ったが、◆は唇を噛んで首を振る。
「……私がこの船に乗らなかったら、船長はこんな怪我を負う事も無かったでしょう? 私が政府に追われる小説家だから、CP9にあなたも狙われて――迷惑をかけてしまった。きっとドレーク海賊団は政府に目をつけられてしまう……」

- 24 -




←zzz
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -