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「そいつァ〜立派なァ立派なァもんじゃァ〜無ェかァ〜よよいッ!!!」
 カンカン! と響く音に続けて、カクが笑う。
「そんな事云ってみてものう、お前さんはここで、わしら“CP9”に殺される運命なんじゃ。戦う力も残ってはおらんじゃろう」
 カクの云う通りだったが、それでも◆は“ドレーク海賊団”の一員として、ここで死にはしたくなかった。
「よよい!! お前さんのォ〜その天晴心意気!! しかと、あしかと受け止め奉りィ〜ここはおいらがァ、あおいらがァ最期を見届けてェやらァ〜!!!」
「――あッ!」
 避ける力も残っていなかった◆は、“髪縛り”を受け、身動きを封じられてしまう。
「さァさァさァ〜たむけに持ってェ逝きやがれェ〜! 韓紅のォ“柳・吟・情”!!!」
「――ッ!!!」
 クマドリの持つ錫杖が風を切る。
 そして、◆が息を飲んだ時だった。
「――ンなにィ!?」
 突然、白いモヤが◆とクマドリの間を割った。
 そのモヤのせいで錫杖の手元が狂い、間一髪◆の肩ギリギリ上を通過する。
「ええい、モヤのォ〜せいでェ〜手ェててて手元がァ〜」
「助かった……ッ」
 クマドリの“髪縛り”が緩んだ隙をついて、◆は弾かれたように後ろへ飛び退くと、傷を庇いながら素早く辺りを見回した。
 二人を割ったモヤは一瞬にして広がり、辺り一面が真っ白になり、クマドリ達の姿も見えなくなる。モヤにしては分厚いそれは雲のようにモクモクと◆たちを包み、これにはCP9もうろたえていた。
「なんなの!? この濃いモヤ……!」
「“月歩”――チッ、何処までも続いているようだな。早く奴らの居場所を……!」
 空中を飛ぶ音も聞こえてくるが、空までモヤは続いているらしく、抜け出せないのか、ルッチの舌打ちする声が落ちてくる。
「じゃが、こう見えないとやり辛いのう……フクロウが居ればいいんじゃが」
「あこんなァ事でェ〜動じるたァ男がァ男がァ、あ廃るぜェ〜よよい!!!」
「ああもう、うるさいわ! クマドリ!!」
 四人の声はそれぞれ違う方向から聞こえたが、大体の方向と距離は掴めた。
 ◆は息を殺し体勢を低めに取ったまま、倒れているドレークの傍へ駆け寄る。
(船長……!)
 息はあるようだ。◆はホッとするも、この白いモヤの中でどうしたら良いか分からず、とにかく真っ白な辺りを見回した。
 ――と、急に一部のモヤが薄れ、先に見覚えのある道が見えた
(……!?)
 何かの罠か、それとも天候の幸いか、今は迷っている暇は無かった。とにかくこの状況から抜け出さなければならない。
 ◆はぐったりとしたドレークを起こし、腕を自分の肩に回して持ち上げ、開けた道へなるべく素早く進む。
 モヤを抜け、後ろを振り返ると、未だに濃い白さと、その中から四人の声が聞こえて来る。
「……ハァ、船へ急がなきゃ……っ」
 音を立てないよう注意し、◆はドレークを引きずるように連れ、船の停泊場所へと急ぐのであった。

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