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「……そう、か」
 ドレークは何とか平静を装って答えた。“信念を持っている”から、そんな貴方も“好きだ”と云われたのだと、必死に解釈した自分に呆れてしまう。◆と居ると、いつもの冷静さを色々な意味で失ってしまいそうになるから怖い。
「――!」
 その時、頬がピリッと何かを感じ取る。
「……何者だ」
 ドレークは海の方を見つめたまま、背後の“気配”に静かに問いかける。
「……?」
 ◆はドレークの様子に首を傾げ、ふと後ろを振り向いた。
「――いつの間に……!」
 そこには黒い服で身を包んだ者達が並んでいた。
「気配を消す事は、わしらには造作も無い事じゃよ。なァ、カリファ」
 鼻の長い男がそう云うと、名を呼ばれた髪の長い女性が怪しく微笑んで頷く。
「勿論よ、カク。けれど、そこの“元少将さん”は薄々気付いていたみたいだけど……わざと分かるようにしていたの? ルッチ」
「まあな」
 ルッチと呼ばれた男が短く頷き、シルクハットを被り直すと、ネクタイを締めたハトが肩からパタパタと何処かへ飛んで行った。
 すると今度は、淡いピンク色の髪の大男が錫杖を振りながら、大声で謳い出した。
「よよいっ!! このCP9のォ気配に気付くとはァ〜並大抵の人間じゃァ、ん無〜理〜だァよよいっ!!!」
「うるさいわ、クマドリ」
 そんなやり取りにドレークは振り返ると、◆を庇うようにして立つ。
「ルッチ……その名は聞いた事があるな」
「“サイファーポールNo.9”は、貴方もご存知でしょう。元海軍将校、X・ドレーク」
 その名に、やはり、とドレークは目を細めた。
「政府直下の暗躍諜報機関の者が、一体何の用だ?」
 “政府”と云う言葉に、◆がピクリと反応する。
「ドレーク船長!」
「どうした……?」
 ドレークのマントを引っ張る◆に、CP9を警戒しながら振り向くと、ルッチがニヤリと笑った――それは◆に向かって。
「我々は貴方ではなく、そこの“小説家”に用がある。謎多きフィクションライターである……◆に、だ」
「――!!」
 ルッチの言葉に◆が息を飲むと、カリファが眼鏡を優雅な手つきで上げる。
「元々、そこのお嬢さんは政府の監視下に置かれていた事は知っているはずよね? 危険視を受けつつも、ただのフィクション作家さんは監視で済んでいたけれど、ついこの間、“ドレーク海賊団”に入り、無法者の海賊になった情報が入った――そして、政府は“◆の抹殺”と“著書の抹消”を我々、CP9に命じたのよ」
 カリファが云い終えると、◆は悔しそうに唇を噛んだ。その様子に気付いたドレークも険しい顔になる。

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