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 ◆は可笑しそうに笑いながら、小さく両手を振った。
「船長が謝る事なんて無いです。私が“読んで”って渡したんだから、読んで貰って全然構わないの……それに、相手も大した海賊ではなかったし、私はただみんなと一緒に戦っただけだから」
「しかし――」
 ドレークが反論しようとすれば◆は傍にあったティーポットを取り、ソーサーに逆さにしてあったカップを正すと、紅茶を注いでドレークの前にそっと置いた。
「……まあ、ドレーク船長が居た方が心強かったですけど?」
 みんなそうだったと思う、と◆は自分のカップに口を付けながら笑う。
 ドレークも、淹れてもらった紅茶を飲みつつ、うん、と唸った。
「……お前は新入りなのに、クルーをまとめて戦闘を無事に終わらせた。おれのせいで迷惑をかけた事への詫びと礼をさせて欲しいのだが……何かあるか?」
 ◆のことだ。気にしないでと云うと思ったものの、ドレークの表情と態度が“それをしないと気が済まない”と訴えていたのだろう。考えるように宙を仰ぐ。
「そうですねえ……」
 ふと、◆は自分の服を見る。戦闘の時に着ていたものではなく、船が落ち着いてからシャワーを浴びて着替えたものであった。
「じゃ、服を一緒に見て貰えます? お気に入りの服を着ていたんだけど、戦闘でダメになってしまったの」
「……そんなことでいいのか?」
 ドレークは拍子抜けして首を傾げる。随分、楽なお礼になってしまうなと思ったが、◆らしいと云えばそうなのかもしれない。
 全然、と◆は遠慮をしている様子もなく、わがままでもない。心地の良い返答だなと思った。
「そうか……では、それは必ず次の島で果たそう」
「ドレーク船長と島を回れるなんて楽しみですね」
 そう笑った◆を見ると、ドレークは自身の行動に反省しつつも、結果オーライな気がしてしまい、そんな自分に苦笑するのであった。



 島にはそれから一週間ほどして着いた。
 それまでも何度か戦闘を仕掛けられはしたが、ドレークが名誉挽回とばかりにほぼ一人で潰してしまった。その度に◆は飛び跳ねて感激していて、ドレークは肩をすくめて笑い、それを見てクルーも笑うと云う、海賊船にしてはなんとも微笑ましい光景が繰り広げられた。
「ドレーク船長、あそこに行ってみましょ!」
 ◆とドレークは約束通り一緒に上陸し、町の中心部を歩いていた。
 前回の島より大きな島は、かなり栄えているらしく、町も広く賑やかである。
「◆、前を見て歩け」
 幼い歳の娘のように楽しそうにはしゃぐ◆に目を細めながら、ドレークは後をついて行く。何しろ人が多いので見失ったら困ってしまう。

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