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 そして――。
 見事にまとまったドレーク海賊団は、◆の云う通りに接近戦部隊と援護射撃部隊に分かれた。
 敵船に飛び移り、男相手にダガーを操る◆たちが船上をパニックにし、銃を持ったクルーが自船から冷静に敵を狙い撃ちにする。そうしてドレーク不在の中、ラカム海賊団に圧勝したのである。
 自船に戻ってきた◆たち接近戦部隊を歓声で出迎え、奪ってきた宝や食料を皆で運び、数時間後には戦闘前と変わらない静かな船になった。
「――しかし、まさか◆に仕切られるとは思わなかったなァ」
 操舵室で、先程射撃していたクルーがふと云った。隣で航海士と海図を見ていたクルーは、あァと頷く。
「おれは一緒にラカムの船へ攻め込んだんだが、近くで見ると凄いぞ。さすが云うだけの事はある、いい腕してるよ」
「小説家で戦闘も出来て、おまけに美人か……不思議な奴だな、◆は」
 航海士がそう呟いた時だった。
 操舵室のドアが静かな音を立てて開く。
「ドレーク船長!」
 入って来たのは、若干ぼんやりとした表情のドレークで、眠そうな目で操舵室を見渡した。
「なんだ……皆やけに静かじゃないか。甲板にもクルーの姿があまり無いぞ」
 何かあったのか、とドレークが云うものだから、そこに居たクルーは揃って苦笑いで顔を見合わせた。
「実は、船長が読書されている際に敵襲がありまして」
「なに!?」
 ドレークの目が、眠気も読書後の不思議な浮遊感も吹き飛んでしまったように、思い切り見開かれる。
「“がぶ飲みのラカム”と云う海賊でしたが、船長にどう声をかけても全く反応されなかったので……それで皆最初はうろたえてしまったんですが、◆が――」
「◆が……?」
 その言葉に反応すると、そうなんですよ! とクルーたちは目を輝かせ、口ぐちに賞賛を述べ始めた。
「おれ達を、◆がまとめてくれたんです!」
「ラカムについても知っていて、どうって事無い相手だと云ってくれたので、落ち着いて戦闘に移れました!」
 盛り上がるクルー達に、ドレークは少々たじろぐ。
「おまけにあのダガーの腕前! ◆は真っ先に敵船へ攻め込んでいって、バッタバッタと斬り倒すし!」
「◆の冷静な判断で戦闘はすぐに終わりましたよ!」
 畳みかけるように押し寄せた情報に、ドレークは混乱しかけたが、一つ息を吐いてこめかみに手を当てた。
「……では、おれが読書に耽っている間、◆を先導に敵船と戦闘をしたと云う事なんだな?」
 怪我人は居ないな、と確認すれば、クルーは揃って頷いた。
「――すまなかったな。船長だと云うのに勝手な行為で、お前たちを不安にさせてしまった。おれの不注意だ」

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