14
 海賊船では朝食の時間がきっちり決まっているところもあれば、各々が好きな時間に取るところもある。当直や各職務で忙しかったりすると、決まった時間に食べられない事も多いし、食事の回数だけ決まっているところもあるのだ。
 そして、ドレークは自分が朝食を取る時間を決めていて、その時間には必ず身なりを整えて食堂に現れるのだが、どうも今日は違うらしい。
「変ね……何かあったのかしら」
 ◆がそう呟いた時だった。
 突然、地響きのような音と、波が荒立つ音が響き、船体が激しく揺れた。
「なに――!?」
 揺れで床に落ちてしまったティーカップを気に掛ける暇も無く、すぐに鐘の音がけたたましく聞こえてくる。
「敵襲だァー!!!」
「――!」
「おれが船長室に行って来る!!」
 ◆とクルーが顔を見合わせると、二人の会話を聞いていたらしい別のクルーが素早く駆けて食堂を出て行った。
 他クルーたちと共に甲板に出れば、後方からドクロが酒を飲んでいるジョリー・ロジャーを掲げた船が迫って来る。
「七時の方角に海賊船! “がぶ飲みのラカム”の船だ!!」
「“ラカム”――なんだ、大した相手じゃないのね?」
 ◆の言葉に、周りに居たクルーたちが振り返る。
「知っているのか? ◆」
「うん、ある程度の海賊の事は頭に入れてるつもり。ーーラカムは酒樽と一緒に生きてるような、完全なアルコール中毒者。酔っぱらいの突拍子も無い攻撃さえ防げれば、難なく潰せるはず……この海域でまだ4500万ベリーの賞金首だもの」
 すると、先程船長室へ向かったクルーが慌てた様子で甲板に出て来た。そのクルーに◆が走り寄る。
「ドレーク船長はっ?」
「それが、こんな時だってのに読書中! オマケにどう声を掛けても揺すっても、全く気付かないんだ!」
 その説明で、クルーたちが揃って◆に注目する。
「それって――」
「私の本、のせい?」
 ◆が苦笑いを浮かべると、皆慌て出す。敵はもう目前に迫っているのだ。
「どうするんだ!? 船長不在って事だぞ!?」
「大丈夫だ、大した輩ではないと◆が云ったじゃないか」
 そんな周りを尻目に、◆が腰元に手をやると、そこにはギラリと光るダガーがあった。
「ドレーク船長が居ないなら、クルーの出番でしょ!」
 ね、と云う笑みに皆が釘付けになる。
「接近戦が得意な者は敵船へ……私も行きます! 銃を持ってる者は自船から援護を!」
「――!」
 ◆の言葉にクルーたちは顔を見合わせ、オオッと声を上げた。
「戦闘だ、皆配置につけ!!」

- 14 -




←zzz
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -