11
「遅くなってすまないな」
 予定の時間はとっくに過ぎており、海も空も夜の闇を纏い始めている。航海士の元へと急いで声をかければ、おかえりなさいと笑顔で云われてしまった。
「出航準備は整っています――あれ、そちらはどなたです?」
 ドレークの後ろの◆に気付いた航海士は、興味深そうに◆を見つめた。
「ああ、後で話す。とりあえず、まだ先が見える内に出るぞ」
「……承知です、船長。おい皆、出航だ! 錨を上げて帆を広げろ!」
 オオッと云う声と共に、クルー達は自分の持ち場につき、それぞれの仕事をこなしていく。
 それを面白そうに眺めている◆を隣に置き、ドレークは航海士から航海予定の相談を受けていた。
 ――出航し、航海が順調に落ち着いた頃。持ち場にはり付いていなければならない当直以外が、甲板に集まっていた。
「そろそろ説明して頂きますよ。出航時間を大幅に遅らせた上、女の子を連れて帰って来るなんて。みんな動揺してます」
 航海士にそう云われ、ドレークはバツが悪そうに頬を掻く。
「ああ、分かった。――◆」
 ドレークはそう云うと、隣に居た◆に簡単な自己紹介をと促す。
「はい、船長」
 頷いた◆は、一歩前へ出る。
 「初めまして、◆と云います! ええと……職業は小説家で、自分の身を守る程度には戦えます。どうしてもドレーク海賊団に入りたくて、頼み込んで船へ乗せて貰いました! これから仲間としてお世話になります、よろしくお願いしますっ!」
 ◆が云い終えると、クルー達は顔を見合わせる。
「小説家……?」
「仲間になる……?」
「船長、それは新入りって事ですか?」
 ドレーク海賊団には女性クルーは居た事がない。そして、◆は小説家と名乗った。クルー達が上手く事を飲み込めないのも無理は無いだろう。
「ああ、そうだ。これから一緒に航海をしていく大事な仲間だ」
 ドレークはクルーを見渡す。
「◆はおれが読んでいた本の著者でな、偶然にも先の島で逢ったのだ。◆の信念を聞いて、おれは◆を乗せる事を決めた。――異議を唱えたい者は居るか?」
 ドレークの言葉に、クルー達はシンと静まりかえっていたが、暫くすると嬉しそうな声が上がってくる。
「船長を夢中にさせた本の著者に逢うなんて……さすが船長、強運を持ってらっしゃる」
「しかもかなり美人! 船長ッ、やりますねえ!」
「あのなあ……お前達……」
 航海士がたしなめるように云うが、クルー達は盛り上がるばかりである。
「では、ドレーク船長! 今夜は間違いなしに宴ですね!」
「◆の歓迎会をやらないと!」

- 11 -




←zzz
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -