20/09/24〜21/07/28
トラファルガー・ロー

どこにいても本能ベクトル



「ロー船長の羽織、イイっすね! なんて云うかシブい!」
 無事、ワノ国に辿り着いたハートの海賊団。
 今は、海外の者だとバレぬよう早々にお着物を調達し、錦えもんたちに教えて貰いながら、着付けに奮闘し合っているところ。
「コイツが勝手に選んだ」
 シャチに褒められたローが不服そうに親指で私を指す。でも、そんな事云っても本人も脱がないし。あと似合ってるし。
「あれっ、これなんだろ?」
 食べ物は無いかと調達したものを漁っていたベポが、何かを見つけて声を上げる。
「ベポ、それって“簪”じゃない?」
「カンザシ??」
 駆け寄った私にベポが見せてきたのは、小さな鈴がついた藤下がりの簪。繊細な薄紫の飾りが揺れる度、その鈴が涼やかな音を立てた。
「素敵……! これはね、結った髪に挿したり、毛先を巻き付けたりして髪をまとめるの。ワノ国のアクセサリーだよ」
「そうなんだ! じゃァこれ、その髪に挿したらきっと可愛いよ」
 無理矢理に髷を作ったベポから、その工芸品を有り難く受け取る。
 “外”ではなかなかお目にかかれないデザインを、しげしげと眺めていると、傍にローが立つのが分かって顔を上げる。
「――髪飾りか」
「鈴がついてて可愛いよね。でもこれって髪を飾るだけじゃないの、知ってる?」
 おれは髷は要らねェ、と頑なに帽子を被るローの鼻先に、藤下がりを揺らす。
「暗殺にも使えるんだって」
「……へェ? 頼もしいじゃねェか」
「寝所で浮気な旦那さんを刺したりね」
 ほんの少し黒い声を含ませて云ってみれば、あまりお目にかかれない、ローのギョッと見開かれた眼。
 けれど、すぐに呆れたように鼻で笑ってみせる。
「フン、刺されるような真似するかよ」
 寝首も掻かれねェ、と云う不敵な笑みは頼もしく。
「だが……首輪は着けてもいいかもな」
 チリン、指先で鈴を弾き、潜伏先の納屋へ続く道を歩いて行ってしまう。
「鈴が首輪? ――って、ロー! 私は猫じゃないんだから! それにペットはベポがいるじゃない!」
「ペット!? おれは航海士だよ!?」
 心外なお言葉に、翻る“シブい”色の羽織を追う。
 知らず握った、貴方が帰る場所――ベクトルの向く鈴を鳴らしながら。






 Fin.





(あーあー、楽しそうにしちゃって船長)
(久しぶりに見たよ、船長のあんな顔)
(麦わらたちが来たら騒がしくなりそうだし、つかの間の休息だな)









******
 久しぶりにローのお話をと書いたものです。初二年後inワノ国!
 タイトルの色は、彼の羽織をイメージし、和色「葡萄(えび)色」です。拷問された時、着物の不敵感とかがお似合いだったので、討ち入りも和装が良かったなァ……褌の締め方とか教わったのかしらとか考えますよね皆さん!
 拍手&コメント、どうもありがとうございました!

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