15/03/07〜18/07/06
サボ

そんなもの、
 無くもがな!!




「はあ〜、かっこいいなあ、総長」
「――そりゃどーも」
 数週間の任務を終え、バルティゴへの帰還船の舳先で、一人にやにやしていたら、隣にご本人登場。
「ほんとにかっこいい」
「……へェ」
「うん! あ、これもかっこいいんだよね〜」
「あのなァ……お前ッ、おれを見るなら、ここに居るおれを見ろ!」
 ムフフと怪しく笑む私に、サボは自分の胸を叩いてそう云った。でも私は顔を上げない。上げられないのだ。
「無理。実物は見れない」
「なんでだよ!」
「実物なんて見たらどうなるか分からないもん、こんな男前なんだよ?」
 私が眺めていたのは、まるでブロマイドのような写真の束。被写体は参謀総長・サボ――彼は非常に私のタイプであり、その写真を眺めるのが至福の時。
 けれど、がっつりストライクなのが災いして、本物のお顔はまともに見れた試しが無い。
「なんだそりゃ……すげェ複雑だ……」
 深い溜め息を吐き、船縁に項垂れた――かと思いきや。
「――あ!!」
「ハハ、隙あり過ぎだな、お前」
 私の大事なコレクションを、目にも止まらぬ速さで一枚抜き取った――!
「あー! それっ、手袋外してるヤツは貴重なんだから! 返してよッ」
 サボの顔は視界に入れないように手を伸ばすが、写真は高く掲げられ、到底届かない。
「そうかそうか、だったらこうだ――返して欲しければ、おれを見ろ!」
 写真を取り上げたまま、サボはガキ大将のように云ってのけた。
「……何云ってんスか、総長」
「そうだな、ちょっとおれと目を合わせるだけでいい。じゃなきゃ返さねェからな。参謀総長の権力を駆使し、絶対お前には渡さない」
 ピラピラと潮風になびく写真。不敵に、そしてこんな時もカッコ良く宣言してくれる。顔は見れないけど、きっと男前に笑っているのだろう。
「ッうわ〜! 革命軍のナンバーツーで御座すお方の言葉とは思えない!」
「フン、ならいいさ? 本当に返さねェからな!」
 革の手袋をはめた指先が、私の大事な写真を胸元に仕舞い込む。何故そんなに私に見て欲しいのか分からないけど、私は写真を通してちゃんとサボを見ているのに――!
「す……素手の総長ォ……う、ううう……」
「ホラホラ、大事なんだろ? 少しでも見てくれりゃァ――」
「うわーん! コアラちゃああああん!!!」
「あ!? ちょ、コアラはまずいって!!」
 耐え切れず、後ろでハックと鍛錬していたコアラに助けを求めた。
「サボくん、なーにいじめてんのーッ!!!」
 泣きつく私とサボの姿を見て、瞬時に事態を把握したコアラは、指をポキポキ鳴らして舳先へと駆けて行く。
「ま、待て、これにはワケが――ってオイ! その手は仕舞っとこう!!?」
 ヤバイ、と慌てて逃げるサボ。追いかけるコアラは魚人空手の構えだ。
「いけいけコアラちゃーん!」
 呆れるハックの後ろからコアラを応援する私を一瞬振り返り、サボは後甲板の方へ逃げていった。
「くそ、アイツ……見てろよ……!!」
 おれは絶対に諦めねェからな! と捨て台詞を残して――。





 Fin.









→→→→→
 初サボでした。甘くもなんともないSSでしたが長いお勤めでした。私がサボ好き過ぎてこんな状態でしたね。
 一応「総長」と敬ってるけど、任務を共にしたりして幹部とは仲良しのヒロインです。
 タイトルは「そんなものないほうがええわ!」って意味で、サボにとっての写真てことで。地味に続くかもです。
 拍手&コメント、どうもありがとうございました!

- 25 -




←zzz
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -