11/02/13〜11/04/25
ペル

ラブアンドピース、アンドユー



 空を見上げれば満天の星。そして、彗星のように隼の羽が光る。
「――っ、ペル! お帰りなさい!!」
 中庭に降り立つ戦士にお帰りのキスを。
「またあなたは……夜の迎えはいいと云った筈でしょう」
 ペルがたしなめるように私の肩に手を置いて、少し距離を取る。
「夜の見回りは夜半を過ぎる事もあるのです。幾ら宮殿の敷地内とは云え、こんな時間に女性が外を出歩くものではありません」
「あら、教育係みたいな事を云うのね」
 クスクス笑えば、ペルはハァ、と小さな溜め息を吐いた。
「護衛兵として、あなたを危険に晒す訳にはいかないのです」
 こんなに冷たくされて、とペルは私の頬にそっと触れる。
 砂漠の夜は気温が氷点下にもなる事がある。そんな中を飛び回ってきたペルの手はとても温かかった。
「……“護衛兵”として、だけなの?」
 私はその手に自分の手を重ね、首を少し傾けてペルを見上げる。
「っ……そ、れは……!」
「私がお迎えをするのは嬉しくない?」
 アラバスタの守護神は、朝から晩まで見回りと訓練だ。それは当然の事だし、戦う相手も居ないのに“護る”為に強くなろうとする彼を誇らしくも思う。
 けれど、傍に居れないのは寂しいのだ。
「ペルは寂しくないの……?」
「……そんな訳無いでしょう」
 途端、引き寄せられてギュウと抱き締められた。戦士の腕は逞しく、優しい。
「私も寂しいのですよ」
 触り心地の良い衣を掴み、私は胸に顔を埋めた。
「私は……護衛兵である前に、あなたを想う一人の男ですから。出来る事ならば傍にあなたを置いておきたい。けれど、あなたが幸せであるように祈り、哀しむ事の無いよう“護る力”を欲するのは、一人の男として、またこの国の護衛兵として当然なのです」
 見回りや訓練で疲れて帰って来た時、あなたの笑顔を見ると本当にホッとします、とペルは私の髪を撫でる。
「しかし、こんなに体を冷やして待っていられるのは辛い――分かってくれますか?」
「……うん。……ごめんなさい、ペル。それと、ありがとう」
 胸から顔を上げると、ペルは少し困ったように笑った。
「実は私も、あなたの出迎えを楽しみに帰って来ているので……護衛隊副官として、なっていないとイガラムさんに怒られそうだ」
 そしてペルは私の手を握ると、渡り廊下を歩き出した。
「ね、ペル」
 その後ろ姿に声を掛ければ、いつかと同じように足を止めて、こちらを振り向く。
「何でしょう?」
 夜の空を斬り、星を蹴散らす速さと強さを持ちながら、私を見つめてくれる眼差しは酷く柔らかい。
「夜はお迎えは出来ないけど、私……ベッドで待ってるわね!」
 しかし、それをからかってみたくなるのは仕方の無い事だろう。
「―ー!? な、ッ……なッ何をッ……!!?」
 予想通り、アラバスタ最強の戦士は慌てふためく。
 アワアワと何を云っているのか、この世に希少なハヤブサ・ペルが真っ赤になって取り乱す傍ら、彼が望んでくれる“幸せ”を感じながら、私はふふっと微笑むのだった。








 Fin.










→→→→→→
 今回の拍手はペルにしようと思い、以前の拍手SSで書いたペル夢「待合室」の続きを書きました。そんなに進展していないですけどね。きっと二人は同じベッドで寝たりしていますが、今回はちょっと意味深と云う事でペルも焦ったという。彼としてはまだまだ手は出せないのではと思います。歳も離れているし……と云う具合かな。
 かなり長い間の拍手SSになってしまいましたが、反響が多くて嬉しい限りでした。
 拍手もコメントも、どうもありがとうございました!

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