暁に想う
 空と海とが混ざり合う水平線。その継ぎ目が徐々に明確になっていく時刻。
「ん……」
 深い眠りから浮上したドレークは、まどろむ意識の中、隣の温もりに手を伸ばした。
「――、……?」
 シーツの上にある自身の手は、“それ”を抱き寄せる事なく彷徨う。
「……◆……?」
 掠れた声が薄暗い部屋に響く。ゆうらりと波にたゆたう船よろしく、ドレークは半分眠ったままの体をふらりと起こした。
 気を抜くと閉じてしまいそうな目を凝らし、船長室を見渡す。
「起きるには少し早いですよ、船長」
 隣に居るはずだった者のおかしそうな声が聴こえ、見れば小さな丸窓の前に椅子を置いて腰掛けていた。カーテンは僅かに開いており、仄かな明るさが床へとこぼれている。
「お前もまだ早いだろう……そこで何を?」
 この部屋には二人しか居ないが、明け方とあって互いに小さな声で――片方は眠たそうな声で――話す。
「目が覚めちゃったから外を眺めていたの。静かで心地良くて」
「……なるほどな。この時間の空気はおれも好きだが」
 ドレークは口元を手で覆い、ふわ、と欠伸を漏らした。
「◆」
 おいで、と手招きをしつつ、自分は再び横になる。
 丸窓のカーテンを閉め、ベッドへ上がってきた◆の腰に手を回すと、その体はひんやりとしていて、思わず息を詰めた。
「全く――こんなに冷やしたら暖がとれないだろう」
「だって明け方に必ず私に抱きついてくるから。ちょっと意地悪してみたの」
 その言葉に眠気まなこを見開く。
「すまん」
「ふふ、謝るのは私の方。起こしちゃってごめんなさい?」
 そう云いつつも、少しからかうように微笑んでいる◆を、ドレークはこれでもかと強く抱きしめた。
「うぐ……! っもう、ホラ、寝る時間が少なくなっちゃう。目閉じて!」
「フフ……ああ、分かった」
 素直に目を閉じ、腕を緩めると、◆が自分の胸に寄り添うのを感じる。
「もう一度、おやすみなさい……ドレーク船長」
「ん……おやすみ」
 どちらからともなく互いの温もりが眠りへと誘い、部屋には再び二人分の深い呼吸が広がる。
 ――暁は空から去るその瞬間まで、二人をやさしく包んでいた。



 END.













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 これは一つ目のお題「朝焼けまで〜」と同じ時間帯ですね。ようやく戻ってきたという。
 二人とも既に起床していて……と云うのも考えましたが、ベッドの中でまどろむのは、ドレークさんでも書いておかなくちゃと。きっと半裸で寝てる船長に抱きつきたい私の願望むき出しです。
 「想う」と云う描写をしてませんが、二人は想い合ってるわけだから! とこんな感じになってます。しかし凄く短いお話ですね、これ。だってドレークさんが凄く眠たそうで、早く眠らせてあげたかったのです。

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