DATEの始まり(ドフラミンゴ)
「そんなにじっと見ないでくれる? 集中出来ないの」
 報告書から顔を上げて、目の前のピンク鳥に一言申す。
 色の濃いサングラス越しでも分かる程、強い視線を感じるからだ。
「フッフッフッ……それは無理な話だぜ、◆ちゃんよォ」
 机の前に椅子を置いて、その背もたれに腰掛けるドフラミンゴはニヤニヤと笑った。
「これを早く片付けないと、あなたとデートに行けないんだけど、ドンキホーテさん?」
 それでもいいの、と問えば、ピンクのコートの羽がゆさゆさと揺れる。
「いいワケ無ェなァ、久しぶりのデートだ……! フフフ! だが、見るくれェ許せよ。お前は可愛いからな、仕方の無ェこった」
「何それ」
 軽く溜め息を吐いてまた報告書に集中し出すが、こんな会話も久しぶりなのだ、思わず笑みが零れてしまう。
「おれと会わねェ間、何も無かったかァ?」
 ガリガリ、とペンの音が響く中で、ドフラミンゴがふと云った。
「ふふ、何も無いけど。みんなドフラミンゴの女だって知ってるから、若い男の海兵なんか近寄ってもくれないし」
 肩をすくめながら云えば、視界の端で再びピンクの羽がゆさゆさ揺れるのが見える。
「フッフッフッ! そりゃ結構だぜ、フフフフ! それとも何だ、それはお前にとって残念だと云いてェのか?」
 ドフラミンゴはそう云うと椅子を立って、こちらへ回って来た。そして机の上にヒョイと腰を掛けて足を組む。
 大きな鳥がサングラス越しに鋭い視線で私を見た。
「……何て答えて欲しいの?」
 堪えきれずに口元を緩ませて、目は報告書のまま、手を止めずに聞いてみる。
「……フッフッフ……!」
 ふと何かが動いた気がして、気付いた時には手が勝手に止まり、動かなくなっていた。
「ちょっと、ドフラ……!」
 抗議を申し立てようと口を開いた私の顎に、素早く大きな手が添えられる。そのままそちらを向かされると、息がかかる程近くにズイッとドフラミンゴが迫る。
「フフ……フフフ!! お前もいっちょ前に口をきくようになったじゃねェか。だがなァ、お前にちょっかいを出した野郎だけじゃねェ、お前が手をつけた野郎だってよ、おれァ消すぜ?」
 ニタ、と黒い笑みが私を支配するかのように神経を這いずる。
「安心しろ、おれをどう裏切ろうともお前は消してやらねェぜ。一生おれのモンだからなァ……。なァ? ◆ちゃん」
 異常者の如く笑いながら、こんな事を当たり前のように云う男に湧く感情は一つしか無い。だから私も異常者なのだろうか。
「……ドフラミンゴ」
 能力が解除されていた手を動かして、色黒の太い首を下から人差指でスッと撫で上げる。そして、顎を猫にやるように撫でてあげれば、舌を出して笑んでいたドフラミンゴの口元が閉じて、ほんの少し真顔になる事を私は知っている。
「私にはあなただけなの、ドフラミンゴ。他の男なんてどうでもいい。こうしてあなたに触れていられたら、それで私は充たされるの」
 不安なら監禁でも何でもして、と唇に指を当てながら囁く。
「その代わり、ドフラミンゴも一生私のものだからね?」
 そうじゃなきゃ海楼石の手錠をつけて、私の部屋で飼ってあげる、と云えば、ドフラミンゴは体を仰け反らせ、空いている方の手で顔を覆って豪快に笑い出した。
「フッフッフッ……フフフフフ!!! 云ってくれるじゃねェか、◆ちゃんよォ!」
 そう云い放ったドフラミンゴの顔を見上げていると、ふいに腰に手が伸びて来て、グイと持ち上げられ、その膝に座らされる。
「そんなに可笑しかった?」
「あァ……最高だぜ……! フッフッ、おれの目に狂いは無かったなァ……!!」
 まだ笑い続けているドフラミンゴの首の後ろに手を回し、私も微笑む。
「ね、“愛し合う”ってこう云う事なの?」
「さァなァ……だが確かにおれはそう感じたぜ?」
 自分の台詞が可笑しかったのか、ドフラミンゴはまた仰け反る。一通り笑うと、いきなりキスをされた。
「今日のお前の仕事はこれまでだ、◆。いいだろ?」
 唇が離れ、低く色気のある声で云われたら頷くしかない。報告書なんてもうどうでもいい。
「久しぶりのデートは、何処に連れて行ってくれるの?」
「フフフ……まァ色々考えてはあるが、まずァ◆の家に行くとするか」
 そう云って立ち上がったドフラミンゴに横抱きされて、部屋を横切る。
「私の家?」
 きょとん、とサングラスの奥を見つめれば、再びニヤリと黒い笑みが滲み出す。
「そりゃお前、この展開でおれがそのまま街を歩くワケ無ェだろうよ! ベッドに直行するぜ」
 一発ヤらねェと気が済まねェ、と逸るようにせかせか歩くドフラミンゴの首に掴まりながら、溜め息混じりの笑みを浮かべた。
「右に同じ」
 そしてその頬に軽くキスを落とせば、酷く上機嫌なピンク鳥とのデートが始まる。



 END.


 110408

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