毎日毎時間伝えてる。(クロコダイル)
「クロコダイル、私の事すき?」
「あァ?」
 レインベース地下の事務所。
 大きなソファの上には鰐、そしてその上に◆。
「ね、好き?」
「フン、下らねェ」
 クロコダイルは短くなった葉巻を傍の灰皿に押し潰すと、新しい葉巻を取り出す。
「だって普段云ってくれないでしょ?」
 火を付け煙を吐く鰐は、うるさそうに片目を瞑った。
「普段云わねェから価値が出るもんだぜ」
「私は、毎日毎時間云われても価値を感じるもの」
 胸を張って答えれば、煙が顔面を直撃する。思い切り顔をしかめたら、鼻で笑われた。
「だったら、毎日毎時間、愛を紡いでくれる奴のところにでも行くんだな」
「……そうね。じゃあ行って来ます」
 ◆は溜め息を吐いて、クロコダイルの膝から降りた。
「何処に行くつもりだ」
「海軍本部に居るドフラミンゴのとこ」
 その名を出すと、クロコダイルは豪快にむせた。ザマミロ、砂漠の英雄め。
「毎日毎時間、愛を紡いでくれそうでしょ? 前会った時、口説かれたし」
 零した葉巻の灰を払うクロコダイルにクルリと背を向けた。と、首にヒヤリと金属が巻き付く。
「冷た、わっ!」
 そのまま砂の腕が私を引き寄せて、金属の手の持ち主の胸に飛び込んでしまう。抗議しようと顔を上げれば、葉巻の苦い味をした唇に妨害された。
「んっ、む――!!!」
 暫く続いたキスの猛襲がやっと終わると、酸素の足りない頭でぼんやりクロコダイルを睨む。
「フン、そんな顔で睨んでも誘ってるようにしか見えねェが」
 そう不敵に笑うクロコダイルは、突然私をギュウと抱き締めた。強く、やさしく。
「愛してる、◆」
 聞いた事の無い甘く柔らかな声は、だけど紛れもなく私だけに紡がれた愛。
「……ずるい」
「クハハ、満足かお姫様」
 私はクロコダイルを抱き締め返した。
「ううん、もっと頂戴?」
 唇に乗せて、私にキスを。
「……下らねェ事もたまにはいいか」
「でしょ?」
 してやられたのは、私か鰐か。



 END.


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