睡眠時間(クロコダイル)
ふと目が覚めて、もぞもぞと身を捩る。薄いカーテンから見える三日月の光だけで部屋はかなり明るかった。壁の時計は深夜と明け方の間を示していて、◆はどうしたものかと小さく息を吐いた。
隣には大きく逞しい背中が小さく上下している。ごつごつした背骨を人差し指でツーッと撫でてみた。
「何してやがる」
突然、不機嫌そうな声がシンとした部屋に響き、◆はビクッと肩を揺らした。
「いつから起きてたの?」
「今さっきだ」
ゆっくりとこちらを向いたクロコダイルは眠たそうな目をしていた。
「クロコダイルも目が覚めちゃったの?」
彼の少しほつれた黒髪を撫でながら云う。
「いや……お前の起きる気配がした」
つまり浅い眠りだったらしい。あんな激しい情事の後で、普通ならぐっすりと眠りにつけそうだが。
「ちゃんと睡眠とらなきゃ明日に響くよ」
「年寄り扱いするんじゃねェ」
くすくすと笑えば、ムッとした表情で頭をわしゃわしゃと乱される。
「……馬鹿が」
「ふふ……ふァ」
不思議なもので、先程まですっかり覚めていた目が急に重たくなってきた。
「……◆、寝るぞ」
「うん」
抱き寄せられると、厚い胸板に鼻を押し付けて、クロコダイルの香りに目を閉じる。クロコダイルがシーツを肩まで掛けてくれたのが分かった。
「クロコダイル」
「なんだ」
「好き、大好き」
目を閉じたままでも、彼が呆れた顔をした後、口角を上げたのが分かる。
「あァ……おれもだ、◆」
ぎゅ、と抱きしめられて、髪にキスをされながら、深い眠りに二人で落ちていった。
END.
091203
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