間違えた。(ドレーク)
「ドレーク船長っ! 今暇ですかーっ?」
「……◆、ノックくらいしてくれ」
 ドレークは船長机で溜め息を吐く。
 ノックもなしに勢いよくドアを開けて入ってきたのは、この船で唯一の女クルーの◆である。◆はエヘヘと悪びれもせずに笑いながら机の方へ歩み寄ると、ドレークの顔を腰を屈めて覗き込んだ。
「船長、暇ですか?」
「目の前の光景をよく見ろ、おれは今忙しい」
 ホラ、と見せる机の上には、書き途中の航海日誌と船長日誌、それに読みかけの新聞と本が何冊か積まれている。
「あらまーあ」
「見ての通りだ。おれは忙しいからな」
 ドレークはそう云うと、くるりと背を向けて机に向かう。ペンをインクに浸すと日誌の続きを書き始めた。
「……」
 構って貰えなくなった◆は、しばらくはソファで勝手にコーヒーを飲んだり、本棚の本を引っ張り出してパラパラと見ていたが、どうにも我慢出来ないのか、座っているドレークの後ろに立つと、ぎゅっと後ろから抱き付いた。
「……◆、忙しいと云っただろう」
「……」
「……食堂に行って、茶菓子でも食べていたらどうだ?」
 ◆は抱きついたままフルフルと首を振る。
「……仕事が進まん」
 ドレークはまた一つ溜め息を吐く。
「船長、構って下さいよー。好きにしていいですから――」
 ◆が更にギュウと抱きつくと、胸の膨らみがドレークに伝わる。それにギクリとしたドレークに◆は微笑むと、ドレークの首に回していた手を剥き出しになっている肌に這わした。その手つきがイヤらしくて、ドレークは息を飲む。
「お、い……! ◆、」
 抗議しようと振り向くと、すぐそこにあった◆の目と目が合う。
「――!」
 一瞬◆がふわりと笑ったかと思うと、唇が重なる。すぐさまそれは深いものになって、ドレークは自分の血が、熱が、一点に集中していくのを感じて焦った。
「ッ◆!」
 艶かしく這っていた◆の手を握り、もう片方の手で◆を力強く引き離すと、◆はかなり不満そうな顔をした。
「なんですか、ドレーク船長! 好きにしていいですよって云ったでしょう」
「おれは返事はしていない!」
「据え膳食らわば男の恥って云いません?」
 ニコリと微笑んだ◆に、ドレークは三回目の溜め息を吐いた。
 ふいに、ガタンと椅子から立ち上がると、ドアまで行き、鍵をカチリと回す。そして、その様子を首を傾げて見つめていた◆の傍まで歩み寄ると、その体をスッと軽々と担ぎ上げた。
「うわっ!」
「全くお前は――」
 いつも仕事の邪魔ばかりするな、とドレークは呟きながら、◆をベッドに放った。
「わ! 船長、痛いです!」
「自業自得だろう」
 何がだろう、と◆が考えている間に、ドレークは自分の帽子とマスクを取って、上着を脱ぎ捨て、寝そべる◆に跨っていた。
「さあて。好きにしていいんだったな……?」
「え」
 お前が誘ったんだからな、と云ったドレークの笑みに、ゾクリと悪寒を感じた◆は「やり方を間違えた」と後悔しながら目を閉じ、ドレークに身を任せるのであった。



 END.




(うむ、仕事がはかどるな……助かったぞ◆)
(船長のあほ! 立てないじゃないですか……!)


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