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「いいか、クロコダイル。憎きドフラミンゴの手配で、おれ達の得物にゃ全て“海楼石”が含まれてる。力の前に従うしか道がねェ海賊の痛みを受けやがれ、七武海ッ!!」
 この海では、駆け上がる事が出来なければ死しかない――絶対的な力の差を思い知った時、海賊としてどう生きるべきなのか。
 “元懸賞金額8100万ベリー”へ決死の覚悟で向かってくるスキュアに、クロコダイルは既視感を覚え、葉巻をギリと噛んだ。



(ボスが能力を使わないのはどうして……? 武器に仕掛けでもあるの?)
 ミス・ロビン――ナセは、海賊達を撃ち落としつつ、クロコダイル対スキュアの様子を確認する。
(“前の時”のように能力の弱点をついているの? でも相手は水を使ったりしていなそうだし……)
 ロギア系の能力者と対峙するには、正攻法では歯が立たない。それならば、と知略を尽くして臨む海賊達。そしてその返り討ちが出来るかは本人の能力の高さにかかっている。
(苦戦しているのならボスの役に立ちたい……でも私が何かをしようとしても、却って邪魔になるのかも……)
 そんな事を考えていれば、目の前にサーベルが迫る。
 思わず息を飲んでしまったナセだったが、素早く腰に付けてあった短剣を抜き、それを受ける。
「うっ……!」
 利き手ではない方で受けた為、そんなに力が入らず、短剣がガタガタと震える。
「っ、こんなとこで……」
 死ぬわけにはいかない――銃を持つ手を起こし、トリガーを引いた。
 銃弾を受けて海賊の男は倒れるが、短剣を持つ手が痺れている。
 そう易々と倒せる者達ではない事は、周囲の社員の様子からも見てとれた。なかなかに腕利きらしい。
(でも私は、ボスを知ってるんだから……ボスを守らないと……!)
 知っているからこそ出来る事があるのだ。
 自分など何の役にも立ちはしないかもしれない、けれど出来る事はやりたい。
 そう思い、ナセは敵を撃ちながら間をするすると抜け、なるべくクロコダイルの居る方へと近付く。
「兄弟の痛み、忠誠、配下……そんなモンに命を賭けてどうする!?」
 クロコダイルの声が聞こえてくる。
「“この海”じゃァ、信じるべきは己のみだ!!」
 ズグリ、と胸を抉られるような感覚がする。“その言葉”は、クロコダイルの真髄だと云う事をよく知っている。
 背後に気を配りながら、物陰に隠れたナセは唇を噛む。
 クロコダイルと対峙していたのは海賊の頭と云うのはナセにも分かった。その得物が少し長く、いつかの海賊を思い出す。
「武器に海楼石を仕込んだから何だ? そんなモンでおれの野望を打ち砕けるとでも思ったのか、スキュア!」
(“かいろうせき”……? そういえば、レインディナーズの一室には“かいろうせき”で出来た何かがあるとか、姉さんが云ってなかったっけ)
 そこは地下ではなく、カジノと同じ階にある為、ナセは行く事もなかったが、レインディナーズに来たばかりの時に「“能力者の為”の部屋があるのよ」と、ミス・オールサンデーが説明してくれた事を思い出す。
 そして、“かいろうせき”=能力者にとって好ましくないもの、としてナセは把握した。
(きっとボスの能力があの武器に対しては効かない、そしてあの武器は能力の実体をとらえる事が出来る……だから、鉤爪で戦ってるのね……!)
 クロコダイルも苦戦はしていたが、スキュアもまた息を荒げていた。
「くっ……!」
 その身にこの剣が刺されば――そう思うのに、クロコダイルの左手はなかなかそれを許さない。

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